日本のジェンダーレンズ投資の大きな可能性を探る

September 28, 2023

▼コラム

女性活躍推進が遅れているからこそ見いだせる

日本のジェンダーレンズ投資の大きな可能性を探る

ジェンダーレンズ投資とは?

ジェンダーレンズ投資とは、意思決定プロセスに意図的にジェンダー視点を組み込むことで、ジェンダーバイアスを排除/改善するための投資手段であり、ビジネス、社会、環境、投資成果の向上を目指す投資です。

日本においては、男女賃金格差や金融アクセスにおける格差、就業機会や社会参加の機会等における格差は、世界に大きな後れを取っており、それが深刻な社会課題として取り上げられるようにもなっています。最近発表されたジェンダーギャップ指数2023では、日本は146か国中125位とG7最低、アジアでも多くの国を下回る過去最低を記録しています。(*1) ジェンダー格差が解消されることで、GDP が平均で 35%増加する可能性がある (*2) とも言われています。それだけ女性が活躍することは経済効果に大きなインパクトがあることは各機関の調査でも明らかになっています。

*1  WEF  https://jp.weforum.org/press/2023/06/jenda-gyappu-repo-to-2023-surujenda-made131/

*2  国際協力NGO ワールド・ビジネス・ジャパン https://www.worldvision.jp/children/poverty_03.html

笹川記念財団が実施した、女性への経済的エンパワーメントに関する調査によると「東南アジアにおける女性の職業のうち「起業」が最大シェアを占めています。また、女性の経済力の高まりは、国や地域の経済成長に大きく貢献しており、女性の零細及び中小企業(SME)は東南アジアのGDPの30-53%を占めています。一方、アジアにおいて女性がビジネスを行う上で金融アクセスが大きな問題となっていること」(*3) が判明しています。

*3  笹川平和財団 ジェンダーイノベーション事業グループhttps://www.spf.org/programs/gender/

海外のジェンダーレンズ投資は急成長を続けている
女性および女性を支援する事業の金融アクセスを向上させ、ジェンダーの平等を推進すると同時に地域全体の経済発展に寄与することを図るジェンダーレンズ投資商品は海外ではすでに運用が活発に行われています。

2021年12月発表のWharton Social Impact Initiativeのプロジェクトセージ4.0レポートによると、プライベート・エクイティ、ベンチャー・キャピタル、プライベート・デット・ファンドのジェンダー投資ファンド数は206、同レポートの前年度の138から約1.5倍に急増しています。

(図1*)

*図1 Project Sage 4.0 2020年12月~21年7月期間の調査
https://www.wharton.upenn.edu/story/new-gender-lens-investing-research-insights-from-project-sage-4-0/

この背景には、ジェンダーレンズ投資が経済的なリターンと同時に社会的インパクトの両方を追求できるというベネフィットがあるからです。以下にその内容をまとめました。

(図2)

女性創業者の企業は、女性の雇用や社会的地位の向上をもたらすのみでなく、社会の多様性を高め、社会課題解決思考のビジネスの創出にも貢献しています。金融庁による提言内での女性起業家への投資によるインパクトへの言及でもそのベネフィットが述べられています。

収益性という観点では以下のようなKPI評価も実証されています。

・女性創業者のいる企業への投資は、男性創業者のみの企業への投資よりも63%も高いパフォーマンスを示す

・イノベーションチームに女性を登用し、女性の消費者をよく理解している事業はそうでない事業にくらべ成功確率が144%高い(CTI)

・マイクロファイナンス業界からの経験によると、女性に対する投資は平均に比べて貸し倒れ率が低い(世界銀行)

また、社会的インパクトの側面では、金融庁による提言内での女性起業家への投資による以下のような言及も行われています。

当社の取り組み

2023年9月17日に国連本部で行われたSDG Action WeekendのSide EventであるScaling Up Gender-Lens Financing: A Catalytic Tool for Advancing all SDGs(*4) のセッションにパネリストとして登壇してまいりました。インパクト投資、資本動員、インパクト測定・管理の専門家を含む民間セクターの女性リーダーたちと、SDGsのためのジェンダーレンズ資金調達を拡大するための最新のイノベーションと経済的推進力についてそれぞれの見解を発表しました。

Scaling up Gender-Lens Financing at SDG Action Weekend 2023 | ESCAP (unescap.org)

参加パネリスト:

• Ms. Mari Kogiso, CEO, SDG Impact Japan
• Ms. Moutushi Sengupta, Chief of Capital Mobilisation, AVPN
• Ms. Brianna Losoya-Evora, Head of Impact Measurement & Management, Sweef Capital
• Ms. Kippy Joseph, Senior Advisor, Global Innovation Fund
• Ms. Karen Miller, Global Head of Strategy at Women’s World Banking

これまで日本ではジェンダーは女性活躍の視点のみで語られて来ましたが、海外でのジェンダーレンズ投資は以下の2点の視点から語られることが多くなってきました。

1.ジェンダーを金融分析に組み込むことで、投資のリターンを向上させる

2.投資がもたらす女性と男性への違ったアウトカムを把握することで、社会により良いインパクトをもたらす

ジェンダーは性の違いだけでなく、社会規範の中で形作られた女性と男性の違いを意識することで、より良い社会基盤を作っていくために重要です。そしてそのためにはあらゆる人々がジェンダーについての知見を深めると同時に、女性が主体的に行動できる、インクルーシブな社会があることが前提となります。女性やLGBTなどマイノリティを対象としたビジネスは、社会的に非常に重要であると同時に、カナダのトルドー首相が言った様に「Smart investment(賢い投資)」でもあると確信しています。

*4 UNESCAP https://bit.ly/3rqdoUK

2017年に笹川平和財団がアジアで最大規模の投資総額となる女性支援型インパクト投資ファンドを設定した際にもその全体設計に携わせていただきましたが、弊社は、今後さらに高まる需要と重要性を考慮し、

1. ジェンダーがもたらす生産性向上やイノベーションと、ジェンダー平等がもたらす社会的インパクトの双方を実現する。

2. 「女性活躍」を超えて、ジェンダーメインストリーム、ジェンダー視点を金融分析に取り入れる

を基盤としたジェンダーレンズファンドの可能性を探ってまいります。

株式会社SDGインパクトジャパン
Co-CEO 小木曽 麻里

▼イベント・セミナーのお知らせ

10月6日に開催される「2X Global LP Training & Investor Meet-Up in Tokyo」の“Advancing Economic Growth & Sustainable Development through Gender Lens Investing: Japan and Asia-Pacific”のパネルに、当社Co-CEOの小木曽が登壇する予定です。
当イベントは日本とアジア太平洋地域における2X Globalの立ち上げを意味し、国連PRIインパーソン・サミットの公式サイドイベントです。

▼Carbon Markets WorkshopにCo-CEO/Bradley Busettoが登壇しました

カタールの首都ドーハで9月12日にアル・アティヤ財団とカタール環境・気候変動省が主催したCarbon Markets Workshopに当社Co-CEOのブラッドリー・ブセットが登壇しました。当ワークショップではパリ協定第6条2項の下での協力的アプローチに焦点を当てたワークショップで、ブラッドリーは日本の二国間クレジット(JCM)の取り組みについての見解を共有しました。https://www.abhafoundation.org/events_detail/event-2023-09-12-81

▼Milken Institute Asia Summitにパートナー/広瀬大地が登壇しました

9月13-15日にシンガポールで開催されたMilken Institute Asia Summit 2023において招待制のセッションAPEC Roundtable: Connecting the Asia Pacificのパネルとして当社パートナーの広瀬大地が登壇しました。

APEC(アジア太平洋経済協力)は”Creating a Resilient and Sustainable Future for All”をテーマにAPECを構成する環太平洋地域がより連結性を高め、イノベーティブでインクルーシブな地域へ発展することを目指して取り組んでいます。本パネルでは広瀬は特にAPECを構成する先進国と途上国各国がサステナブルな社会を構築へ向けて、アジアにおけるサステナビリティの動向と、本分野における今後の日本からの貢献の可能性について共有しました。

https://milkeninstitute.org/panel/14808/apec-roundtable-connecting-asia-pacific-invite-only?utm_content=264160608&utm_medium=social&utm_source=linkedin&hss_channel=lcp-73007223

▼ブルームバーグ・ニューボイス 2023 ローンチイベントにCo-CEO小木曽が登壇しました

9月19日に開催されたブルームバーグ・ニューボイス 2023 ローンチイベントに当社Co-CEOの小木曽が登壇いたしました。
男女間賃金格差の開示が義務化されたことで、日本の賃金を全体的に低く抑えている男女の賃金格差の背景ならびに改善などについてコメントをしました。
https://go.bloomberg.com/attend/invite/new-voices-japan2023/

▼そのほかのニュースはこちら

https://sdgimpactjapan.com/jp/news/

Wataru Baba

Senior Fellow, Climate and Sustainability at Panasonic Group since 2022, where he accelerated the company’s growth through an integrated strategy for creating positive impact on climate change and established Sustainability Committee, chaired by the Group CEO. Board Member of Japan Professional Football League (J.League) and Independent Director for a civic technology nonprofit, Code for Japan, and a web3 startup, Financie, Inc