企業の変革パートナーとして――NextGen ESG Japanの伴走型ESG投資

先日、法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア cokiでSDGインパクトジャパン(SIJ) の堀江 磨紀子と鈴木 早紀のインタビュー記事が掲載され、当社が投資助言を行っているNextGen ESG Japan戦略の特徴やアプローチについてご紹介しました。 ESG投資の“中身”が問われる昨今において、当戦略は、従来の枠組みを超えたアプローチを目指しています。一般的なESGファンドが既にESG評価の高い企業に注目する一方で、SIJの「NextGen ESG Japan」戦略は、“これからさらに改善する余地”をもつ企業に投資し、その変化をエンゲージメントを通じて引き出していくアプローチを取っています。 投資対象は、日本の株式市場に上場している中小型株です。企業との対話はIR部門にとどまらず、経営企画、人事、研究開発、マーケティングなど多様な部門にまで及びます。ファンド運用チームは、四半期ごとに企業を訪れ、課題を共有し、経営と現場の双方と深く向き合います。その対話は単なるヒアリングではなく、「問いかけ」から変化の種を引き出すプロセス。そしてその“変化の兆し”を、財務価値と社会的インパクトの両面で可視化する設計になっています。 NextGen ESG Japanは、SIJ独自の「Integrated Value Driver」フレームワークを中核に据え、ESG要素を単なるスクリーニング基準ではなく、企業価値創造のドライバーとして分析プロセスに組み込んでいます。エンゲージメントチームが一社一社に深く入り込み、数年にわたって企業価値向上に向けて財務とサステナビリティの観点で継続的な対話を行う体制を整えています。大変嬉しいことに、経営層からも「財務と非財務を統合的に見てくれる存在」として、高い信頼を得ています。 5月のニュースレターでもご紹介いたしましたが、このような取り組みが国際的にも認められ、2025年5月には第三者評価機関 BlueMark から “Gold”評価を獲得しました。アジアの上場株ファンドとしては初の事例で、戦略から運営・報告にいたるまで、国際的な基準に即した仕組みが整っていることが認められたかたちです。 NextGen ESG Japanは、単に「良い会社を見つける」のではなく、「良くなろうとする会社に伴走する」投資です。ESGが表層的なラベルではなく、企業文化や戦略に根差していくプロセスを、対話と分析、そして信頼を通じて丁寧に育てていく。こうした投資姿勢こそが、今後の日本企業に必要な外部パートナーシップのあり方を体現していると言えるでしょう。 財務リターンと社会的インパクト。その両輪を駆動させることで、持続可能な社会の実現に向けた「変化の連鎖」が今、日本の中小企業群でも始まっています。 詳細につきましては、cokiの記事をご覧ください。 https://coki.jp/sustainable/esg/55969/ ※コラムは、当社が関与する投資戦略に関する情報を含み、第三者メディアに掲載された記事の紹介・言及も行っておりますが、金融商品取引法に基づく広告または勧誘を目的としたものではありません。また、当該記事中に記載のあるファンド等に関しても、当社は特定の金融商品の販売や勧誘を意図しておりません。本記事の内容は投資判断の参考として一般的な情報を提供するものであり、投資の成果を保証するものではありません。投資に際しては、リスクや費用等を十分ご確認のうえ、ご自身の判断と責任により行っていただきますようお願いいたします。 ▼SIJの活動状況・ニュース 林野庁の森林由来JCMクレジットの調査事業に野村證券と共同採択 SDGインパクトジャパンはカンボジアの植林プロジェクトにおいて、野村證券株式会社(代表取締役社長:奥田健太郎、以下「野村證券」)と共同で、二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)を活用に向けた調査事業が林野庁委託事業(令和7年度途上国森林プロジェクト連携推進事業)として採択されました。 詳細はPR Timesのプレスリリースをご覧くださいhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000091539.html RIMM Japanのニュース 当社子会社の株式会社RIMM Japanは、企業のSSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準への対応をワンストップで支援する「myCSOパッケージ」を本格始動いたしました。ESGマネジメント支援プラットフォーム「myCSO」の進化により、ギャップ分析からレポート作成、整合性評価まで、ESG初心者の方でも安心して取り組めるよう、段階的かつ確実に始められる支援をご用意しています。 詳細はRIMM Japanウェブサイトをご覧くださいhttps://www.rimm-japan.com/news/item/3c63a3b4-8c06-4677-8a99-e6a76defb5a6 Bio Engineering Capitalのニュース 当社関連会社Bio Engineering Capital株式会社(BEC)社と、株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)は、資本提携に関する契約を締結しました。本提携により、DX化を推進しているCHCPグループの医療現場と、BECの出資・支援先企業を有機的に繋げ、ヘルスケアスタートアップの有する技術の研究開発(R&D)や事業機会を創出していくことで、医療現場の効率化や新たなサービス提供に資するヘルスケアスタートアップの社会実装を加速させていきます。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000144993.html ▼そのほかのニュースはこちら https://sdgimpactjapan.com/jp/news/ ▼Link 株式会社SDGインパクトジャパン ▶ウェブサイト ▶LinkedIn 株式会社RIMM Japan ▶ウェブサイト ▶LinkedIn
「可能性の世界」は静かに始まっている:企業、金融、社会の現場から見える転機

本コラムはCISOサシャ・べスリックのブログ「ESG on Sunday」(5月18日配信)を抄訳したものです。 「持続可能で公正な社会への移行は可能か?」その問いに対する答えは、イエスだ。しかし、それは即座に訪れる奇跡ではなく、時間とコストを伴う段階的な変化だ。にもかかわらず、いま確かに、その「可能性」は現実へと動き始めている。 欧州企業、気候政策を本気で支援 欧州では、企業が気候政策に対して本気で動き始めている。シンクタンクInfluenceMapによる最新の調査では、欧州主要企業200社のうち、気候目標と整合したロビー活動を行っている企業が2019年の3%から2025年には23%へと急増。一方で、気候対策に反対する企業は半減した。もはや「企業利益と気候行動は対立する」という前提は揺らいでいる。 注目すべきは、これらの企業が必ずしも大々的にアピールしていない点だ。むしろ、水面下で静かに政策を後押ししている。見出しを飾るのは否定派でも、実際に変化を起こしているのは、着実に動く実務派だ。 金融の構造改革はなぜ進まないのか 一方で、金融の世界では依然として持続可能性への本格的な対応が遅れている。ケンブリッジ大学の報告書は、気候変動や社会格差といった複合危機に対し、金融資本が十分に機能していない6つの理由を示した。 最大の障壁は「短期志向」。四半期利益を最優先する文化が根強く、気候リスクは長期的視点に立たないと可視化できない。また、規制の遅れや外部不経済(環境破壊など)が価格に反映されない市場構造も、金融の変革を妨げている。 にもかかわらず、世界の金融市場の規模は2023年末時点で1京ドル(1,000兆ドル)を超えており、そのうち株式市場だけでも115兆ドル。もしこれらの資本を気候技術、再エネインフラ、サステナブルな産業へと振り向けることができれば、巨大な変化を起こすことが可能となる。 再エネと電力網:インフラへの警鐘 再生可能エネルギーの導入が進む中で、新たな課題も顕在化している。最近スペインで起きた全国規模の停電は、再エネ比率の高まりによる周波数不安定が原因とされる。従来の火力発電が担っていた「慣性」(周波数安定化機能)が失われつつあるいま、電力安定の鍵は蓄電池とリアルタイム制御にある。 英国ではAI制御による巨大バッテリー(Blackhillock)がすでに稼働。プエルトリコやドイツでも分散型バッテリーが周波数維持に活用されている。再エネ普及と同時に、電力インフラの再設計が急務となっている。 リサイクル神話の崩壊と消費社会の限界 Circle Economyの最新レポートによれば、世界で年間消費される資源(1060億トン)のうち、リサイクル由来はわずか6.9%。2015年からさらに減少しており、改善どころか後退している現状が浮かび上がった。 問題の核心は、消費のスピードが回収・再利用の能力を上回っている点だ。しかも、多くの製品が実際にはリサイクル困難であり、理論上100%リサイクルできても、現実には最大25%が限界だという。つまり、「リサイクルすれば大丈夫」という楽観論はもはや通用しない。必要なのは、明確な「消費抑制」の方針と、製品設計段階からの循環型アプローチだ。 ESGと資本の逆風の中で 米国ではESG(環境・社会・ガバナンス)投資に対する政治的反発が高まり、多くの金融機関が姿勢を後退させている。その中でBarclaysは、「他が退く中で私たちは深く取り組んでいる」と発言。VWのグリーンボンド発行にも関与し、ESG市場の継続性を示している。 同時に、スイス再保険は「気候災害による保険損失は今年1450億ドルに達する可能性がある」と警告。金融機関が気候リスクを無視し続ければ、将来的な資産価格の急落(ディスオーダリー・リプライシング)の危険性が高まっている。 結論:可能性を現実に変えるのは誰か? いま、企業、金融、インフラ、消費行動のすべてが試されている。持続可能な社会は「可能」だが、それを「現実」にするには、構造の見直しと意思のある行動が必要だ。静かに、しかし確実に進み始めた「可能性の世界」を、私たちはどう受け止め、どう加速させていくのか。問われているのは未来への責任だ。 ▼SIJの活動状況・ニュース 当社のCo-CEO 前川と取締役 岡が、5/23に開催されたRaisina Tokyo 2025のパネルディスカッション“Weathering the Storm: Innovating and Adapting for Food and Water Security,”に登壇いたしました。 Linkedinhttps://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7335517650258694144 当社が出資しているBio Engineering Capital株式会社と株式会社地域ヘルスケア連携基盤と資本提携いたしました。 リリースはこちら ▼そのほかのニュースはこちら https://sdgimpactjapan.com/jp/news/ ▼Link 株式会社SDGインパクトジャパン ▶ウェブサイト ▶LinkedIn 株式会社RIMM Japan ▶ウェブサイト ▶LinkedIn
NextGen ESG Japanファンドが、グローバルなインパクト投資検証機関 BlueMark社より「GOLD評価」を獲得

SDGインパクトジャパンが投資助言を担う上場株インパクトエンゲージメントファンド「NextGen ESG Japanファンド」が、グローバルなインパクト検証機関 BlueMark社より「GOLD評価」を獲得いたしました。 BlueMark社は、インパクト測定・マネジメントについてグローバルな業界標準に基づく評価・検証サービスを提供するグローバルリーディングカンパニーです。同社はFund Impact Diagnostic (以下、Fund ID)と呼ばれる独自の評価フレームを用いて、ファンドのインパクト投資実践状況を「Impact Strategy (インパクト投資戦略)」・「Impact Governance (インパクト投資実践のガバナンス)」・「Impact Management (インパクトマネジメント)」・「Impact Reporting (インパクトレポーティング)」の4観点・全44評価項目で審査・評価します。 今回のBlueMark社の評価結果では、NextGen ESG Japanファンドは上述の4観点の全てで「High」以上の評価を取得するとともに、Impact Reportingについては最高評価となる「Advanced」を取得し、全体では「GOLD」の評価となりました。 NextGen ESG Japanファンドは2022年4月に設定され、SDGインパクトジャパンがあすかコーポレイトアドバイザリーとともに共同で投資助言を行っています。同ファンドのポートフォリオは国内上場企業で構成されており、各社ともサステナビリティへの取り組みを自社の事業成長や競争力の源泉として積極的に位置づけ、その実践に強い関心を寄せています。私たちは、ポートフォリオ企業1社1社に対して、中長期の戦略を踏まえた戦略的なサステナビリティ課題を特定し、深い対話を通じてサステナビリティの取り組みを促進することで、持続可能性と競争力のあるリターンの両立に注力しています。また、投資家に対しても、インパクトの状況を含む詳細かつ透明性の高いレポーティングを実践してまいりました。 日本を含めグローバルでまだ実践事例の少ない上場株投資でのインパクトファンドとして、今回の評価で明確になった良点と課題の両方をしっかりと踏まえて、更なる取り組みの強化を進めて参ります。 ▼イベント・セミナーのお知らせ 「Weathering the Storm: Innovating and Adapting for Food and Water Security」に登壇いたします 5月23日に、当社Co-CEOの前川とManaging Partnerの岡が、JBIC/経済同友会/ORF共催のRaisina Tokyo 2025のパネルディスカッション「Weathering the Storm: Innovating and Adapting for Food and Water Security」に登壇いたします。当パネルでは、気候変動への懸念を背景とした、インド太平洋地域の各国における食料と水の安全保障の課題について議論する予定です。 ▼SIJの活動状況・ニュース 5/8に当社Co-CEOの小木曽がSusHi Tech Tokyo 2025のパネルディスカッション「エコシステムに今DEIが求められる理由~グローバルな視点・事例から見えるもの~」に登壇いたしました。 […]
EUが「オムニバス法案パッケージ」で規制簡素化を発表:EUのサステイナビリティ目標と政策は後退するのか?

今月のニュースレターでは欧州委員会が2月26日に公表した、規制簡素化のためのオムニバス法案パッケージを解説します。 オムニバス法案パッケージにおいて欧州委員会は、産業界の競争力とイノベーション力向上、投資機会と雇用の創出を目的として、企業サステイナビリティ報告指令(CSRD)[1]、企業サステイナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)[2]、EUタクソノミー規則[3]、炭素国境調整メカニズム(CBAM)[4]、といった、サステイナビリティな社会を実現する金融政策上の要となる広範な範囲の法律を改正し、規制を簡素化することを提案しました。 これらは一定の条件を満たす日本企業にとっても影響が大きい法律であり、2022年以降に適用開始、又は現在も移行期間にあるかなり新しい法律であるため、EUの状況を注視している読者も多いでしょう。規制によっては実際の運用が開始されていないこの時点で、すでに改正されるに至った背景は何か。EUのサステイナビリティ目標が後退することを示すのか、あるいは米国のトランプ政権に代表されるような環境政策に対する反発や大きな揺り戻しがあるのか。本ニュースレターでは、こうした疑問に答えると共に、オムニバス法案パッケージの概要と日本企業への影響の見込みを解説します。 (1) EUのサステイナブルファイナンス行動計画と各法律の成立の背景 遡ること2018年、欧州委員会は「サステイナブルファイナンス行動計画」を通じて、資本市場のキャピタルの流れを持続可能な投資を促進する方向に誘導すること、気候変動リスクや環境リスクを金融システムに統合し金融の安定性を確保すること、そして透明性と長期的視点を市場活動に組み込むことを目指しました。この行動計画は2019年にフォン・デア・ライエン委員長の下で発足した欧州委員会に引き継がれ、2050年までに気候中立 (カーボンニュートラル) を実現させることなどを政策目標とした「欧州グリーンディール」の下においても、目標実現に必要な金融システムの改革や、資本を再生可能エネルギー・エネルギー効率化への投資に誘導させるための法的な枠組みが構築されました。 具体的には、EUタクソノミー規則により「持続可能な経済活動」とは何かを定義するための統一基準を整え、欧州の金融機関に対してはサステイナブルファイナンス開示規則(SFDR)[5]を通じて、保有ポートフォリオの持続可能性に関する情報開示を義務付けました。 並行して、EU域内で経済活動を行う企業に対しては、EUタクソノミー規則下で自社の経済活動のうちサステイナビリティ基準に沿う割合の開示を、企業サステイナビリティ報告指令(CSRD)にて広範な範囲における非財務情報の開示を義務付けることで、投資家の判断に共される情報を標準化し、透明性を高めました。従来、サステイナビリティやESG (環境、社会、ガバナンス)報告書に関する国際的なガイドラインはありましたが、いずれも企業の自主的な取組みであったことに対し、EUでは欧州サステイナビリティ報告基準(ESRS)[6]に基づく非財務情報の開示が法的に義務付けられることになりました。また報告内容の正確性を担保するため、ESRSに基づき開示される非財務情報の第三者保証が義務付けられました。まさに非財務情報が財務情報と同格の位置づけとなったのです。 これにより、金融機関としては、気候変動や社会的課題が各企業の長期的な業績に及ぼすリスクと同時に、企業が地球環境や地域社会等に与える正負の影響を同じ指標でベンチマークすることが可能となり、投融資判断に役立てることができます。そして金融機関は自らのポートフォリオの持続可能性に関する情報をSFDRに基づき開示する、という循環が成立しました。 また非財務情報の開示義務の対象には、EU域内の金融市場で上場する企業だけではなく、EU域内で一定規模以上の経済活動を行う日本企業の子会社・支店や、その親会社である日本企業本社グループも含まれることに留意が必要です。そのため、日本企業にとっては、EU地域報告書の新たな発行や、グループ統合報告書のアップグレードに大きな労力が必要であると見込まれています。 (2) オムニバス法案パッケージの背景 このようにEUでは金融政策の一環として、持続可能性を重視した政策を推進してきましたが、欧州委員会が法律の網羅性と正確性を担保しようとすればするほど、つまり法案を作りこめば作りこむほどに、内容は複雑化・高度化し、企業にとっては対応するために必要な事務負担が増加する傾向が生じていました。例えば、ESRSで報告対象となるデータポイントは定量・定性情報を合わせて約1,200もあり、コンサルタントの試算によれば、そのうち中堅規模の企業が報告書に含めるべきデータポイントは平均で500を超えると見込まれます。多くの企業ではこれら非財務情報は社内の広範な部門、部署、子会社等でばらばらに管理されており、中には現在まったく収集・管理されていない情報もあり得ます。これら情報の収集・分析、ESRSに適合するダブル・マテリアリティ・アセスメントの実施、社内ガバナンス体制の構築、ITツールの導入、報告書への取りまとめ等には一般的な企業で2年以上かかると想定され、特に中小企業(SMEs)にとって過剰な負担であり、競争力を損なう可能性が指摘されていました。 さらに、CSRDの双子法律ともいえるCSDDDでは、サプライチェーン上におけるデューデリジェンスの実施義務を大企業に負わせていますが、結局はサプライチェーンに位置する中小企業に情報収集負担や対応コストが転嫁される負の波及影響が生じるのではないかと、長らく懸念されていました。 同時期に、欧州では2020年のパンデミック、2022年のロシアによるウクライナ侵攻とそれに続くエネルギー価格の高騰、近年の地政学的な緊張の高まりといった外部要因が、欧州企業の競争環境をさらに厳しくしており、競争力強化が急務と見なされるようになりました。2024年6月の欧州議会選挙やそれに先立つ主要加盟国の国政選挙では、産業競争力の維持強化が政策争点の一つとなる一方で「緑の党」が大幅に議席を減らすなど、世論全体が明らかに政策の優先順位の変更を求めていることを示したことも、欧州委員長として同時期に再選されたフォン・デア・ライエン氏が政策を見直す後押しになったと考えられます。 そこでフォン・デア・ライエン氏と加盟国首脳は、イタリアの元首相ドラギ氏に、欧州の競争力を高めるための政策的な方向性を示す報告書の作成を依頼しました。2024年9月に公表された通称「ドラギ・レポート」では、複雑で過剰な規制が欧州の競争力を阻害しているとの指摘がなされ、続いて11月にEU加盟国の首脳は「ブダペスト宣言」の中で具体的に“規制の簡素化革命”を欧州委員会に要請しました。欧州委員会はその回答として今年1月に発表した「Competitiveness Compass」において、規制簡素化を優先課題とすることを対外的に示し、企業に対する負担を25%、中小企業に対しては35%削減させることが、今政権のミッションとして明示されました。オムニバス法案パッケージは、このような経緯を経て公表された、複数の具体的な法律改正案のパッケージなのです。 (3) オムニバス法案パッケージのポイント オムニバス法案パッケージに含まれる主な改正案は、以下のとおりです: CSRDの改正 · 報告対象企業の縮小: 持続可能性報告の対象を従業員数1,000人(現法令では500人)かつ売上高5千万ユーロを超える大企業に限定。上場中小企業は報告義務から除外。報告義務の対象企業数が約80%削減されると見込まれます。 · 中小企業への影響軽減: バリューチェーンにおける情報収集の制限を設け、報告対象外の企業に対して過剰な情報要求を行わないよう規定。 · 任意報告基準の導入: 報告義務のない企業が利用できる簡易な任意報告基準を導入。 · セクター別報告基準の廃止: セクター(業界)別の報告基準を廃止し、報告要件の複雑化を防止。 · 保証要件の簡素化: 現行法で予定されていた限定保証(limited assurance)から合理的保証(reasonable assurance)への移行を廃止し、保証コストの増加を防止。 · 適用開始日の延期: 非上場企業(日本企業のEU域内子会社・支店を含む)に対する義務付けを2026年1月から2028年1月(2027会計年度データ)に後ろ倒し。 · 報告基準の改訂: ESRSが定める報告項目のうち自社への関連性が低い項目の情報開示をスリム化、定量的データを優先し強制的な情報開示項目と自主的なものを明確化することで企業の負担を軽減しつつ、国際基準にそろえる。なおブリュッセルでの非公式情報では、欧州委員会がESRSを制定する欧州機関であるEFRAGに対し、報告項目を3割程度減少させるESRS改定案を8月末までにまとめるよう求めているようです。 期待される効果これらの変更により、報告義務が免除される日本企業が増えるでしょう。また企業の報告負担が軽減され、非財務情報の収集・報告にかかるコストがある程度低減することが期待されます。 CSDDDの改正 · デューデリジェンス範囲の縮小: 企業のデューデリジェンス義務対象を直接的なビジネスパートナーに限定し、間接的なパートナーに対する義務を、情報がある場合に限定。 · デューデリジェンス頻度の削減: 定期的なモニタリングの頻度を1年から5年に延長。 […]
ウェビナーのお知らせ

ニュースレター購読者の皆様、こんにちは。 毎月弊社のニュースレターをお読みいただきどうもありがとうございます。 この度、4月10日に「欧州クライメートテックの投資を通じたグリーントランジッションへの価値創造、および投資先の日本進出事例」と題しましたウェビナーを開催いたします。 当ウェビナーでは欧州のGET Fund(GET)のPartner, Florian Löbermann 氏と当ファンドの投資先であるMetronのKevin Lesaulnier氏をお招きして、欧州のクライメートテックの投資環境とMetronの日本における事業展開をご紹介する予定です。 「欧州クライメートテックの投資を通じたグリーントランジッションへの価値創造、および投資先(仏)の日本進出事例」 日時: 2025年4月10日(木)17:00~18:00開催形式: オンラインスピーカー: GET FundPartnerFlorian Löbermann MetronGeneral Manager & Head of Sales North AsiaKevin Lesaulnier ※GET Fundのプレゼンテーションは英語、Metronのプレゼンテーションは日本語になります。※講演タイトル、登壇者、開催日は変更になる可能性があります。 Green European Tech Fund(GET)は、 GREEN EUROPEAN TECHに投資するインパクトベンチャーキャピタルです。より持続可能な未来に大きく貢献するであろうスケーラブルなビジネスを展開するスタートアップを支援しています。15年以上の投資実績を誇り、「トリプルトップライン」のインパクトフレームワークのもと、 「人」「地球」「収益」の最大化を目指す投資をします。GETはLP投資家のパートナーとして、ディールフロー、共同投資機会、One-on-oneおよびLP投資家同士のワークショップなども提供しています。 METRONは、GETの投資先でエネルギー管理および最適化ソフトウェア・サービスにより、複数拠点のエネルギー使用をモニタリング、また産業施設の脱炭素化を支援します。フランスに本社を置き、日本市場においても、富士通やNTTと製造業のカーボンニュートラルの実現に向けた戦略的提携を締結しています。 申込フォームSustainability Roundtable Session GET Fund x Metron ※申し込みフォームにアクセスできない場合は、弊社ウェブサイトのコンタクトフォームよりご連絡ください。
APACで42億ドル調達。中国を追い抜き首位となった国とは

APACで42億ドル調達。中国を追い抜き首位となった国とは──APAC アグリフードテック 2024年投資レポートより Asia-Pacific Agrifoodtech Investment Report 2024より(当レポートは英語版レポートを日本語に一部要約したものになります) 2024年のAPAC(アジア太平洋地域)におけるアグリフードテック資金調達は42億ドルを記録し、前年比で力強い回復を見せました。その中でもインドが20億ドルを占め、地域全体の48%に達しています。 2024年時点で、世界のアグリフードテック資金調達の31%を占める割合となったAPAC。この最新の投資動向について、アグリフードテックの先駆者であり、ベンチャーキャピタルおよびインテリジェンス プラットフォームでもあるAgFunderによる2024年の投資レポートを発表しました。本レポートでは、国別、カテゴリ別の資金調達動向や日本市場の将来性についても掘り下げます。※ データは2024年10月31日時点のものです。 国別ではインドが首位。APACで42億ドルが調達される APACのアグリフードテック資金調達は2023年の停滞を経て、2024年には42億ドルと回復しました。国別の資金調達額の比較では、2023年度は中国が首位でインド、インドネシアと続く形であったものの、2024年にはインドが前年のほぼ2倍の資金を調達。中国を追い抜き首位となりました。 なかでもインドの動きは目を見張るものがあり、2024年のAPACの資金調達額全体が42億ドルであるのに対し、インドの調達額は20億ドルとその約48%を占めています。ただ、インドでクイックコマース事業を行うZeptoが1社で約10億ドルを調達しています。ディール件数は上半期だけで442件に達し、2023年比で46%増加。一方で、中国も2位とはなりましたが、調達額自体は前年比で18%の増加を見せています。 日本の資金調達の動向に着目すると、2023年には調達額1億8500万ドルで6位を記録していたものの、2024年には2億8000万ドルと前年比58%増の調達を実現。3位への大幅なランクアップを見せました。 投資動向をサプライチェーン別に見ると、下流分野の盛り返しが見られます。まず資金調達総額では下流分野(19億ドル)が上流分野(18億ドル)をわずかに上回りました。ディール件数では2024年の上流分野は320件と最も多く、全体の50%以上を占めていますが、スタートアップ企業が86%も多くのディールを締結した農業バイオテクノロジー部門を除いて、全体的に減少しています。 下流分野の盛り返しの動きには、Zeptoの10億ドルの資金調達が影響しています。この資金調達は下流領域の投資額を確実に押し上げ、急落傾向を逆転させました。また、下流分野全体のディール件数も2023年の157件から2024年には205件と31%増加したことからも、下流分野のディール活動の活発化が確認されています。 高まるe-Groceryへの注目。 上流分野ではバイオテクノロジーの資金調達額が増加 カテゴリーベースの投資については、近年の世界的なベンチャーキャピタルの低迷が一部のカテゴリーに大きな影響を与えています。世界から見たAPACは、革新的な食品開発や斬新な農業システムで先駆的な役割を果たしており、特にシンガポールでは、政府が国家の食糧安全保障を高める取り組みを支援しています。 カテゴリー別に見ると、15億ドルと圧倒的に多くの額を調達したのが、食品や日用品をオンラインで購入・配送するe-Groceryカテゴリーでした。次に、食品の安全性や物流などを含むミッドストリームテクノロジーのカテゴリー(約6億ドル)が続きます。ミッドストリームテクノロジーは、前年比で88%増となる資金を調達しました。 e-Groceryの総額を押し上げたのが、Zeptoの10 億ドルの資金調達であることは事実です。しかし、全体のディール件数を見ても2023 年の 37 件に対して 2024年は101 件と173%増加しており、中国でも新興企業が 3 億ドル以上を調達していることから、e-Groceryカテゴリーへの注目そのものが高まっていることがわかります。 上流分野において、最も投資家の関心を集めるカテゴリーはバイオテクノロジーです。インドのSAELとの大型ディールによりバイオエネルギーおよびバイオマテリアルの資金調達総額が増加し、さらには中国が農業バイオテクノロジー分野で顕著な活動を行ったことにより、この分野への資金調達は3 億9,000万ドルを超えました。その他、上流の農業技術の分野では、前年比で農場管理ソフトウェア(46%減)と農業ロボット(45%減)がそれぞれ減少しています。 アグリフードテックのカテゴリーを掘り下げて見ていくと、バイオマテリアルとバイオエネルギーにおいて2023年にトップだったAPACは、2024年に総資金調達額が46%、ディール件数が41%減少し、20件のディールのうちシード段階で発生したのはわずか7件となりました。 農業マーケットプレイス &フィンテックにおいては、ディール件数がわずか5%だけの増加であったにもかかわらず、総資金調達額が昨年比で98%もの増加を見せました。このカテゴリーは通常インドが優勢を見せますが、2024年のトップディールはシンガポールを拠点とする商品ディールプラットフォームであるValency Internationalによるものでした。 農業ロボットや機械化、その他の農業機械では総資金調達額は45%減少したにもかかわらず、ディール件数は前年同期比13%増加。この分野への関心は依然として高いことが示されました。 APAC資金調達額の8割はインドと中国。 期待される日本の潜在能力 巨大な経済力を持つインドと中国は、2024年時点でAPACの資金調達全体の84%とディール件数の63%を占めています。 インドの活躍により、南アジアでの資金調達は前年比で174%、ディール活動は46%増加しました。東アジアでは、中国の15億ドルに加え、日本と韓国のスタートアップ企業がさらに3億2100万ドルを調達しました。このうち注目すべきディールには、6500万ドルを調達した日本のバイオマテリアルスタートアップ企業Spiber、500万ドルを調達した韓国のクラウドコーヒープロバイダーBrownBagがあります。これらのディールにより東アジアも前年比で好調な業績を示し、 資金調達額は12%増、ディール件数は44%増加しました。 東南アジアはAPAC全体の資金調達総額の7%未満となりパフォーマンスは低く、オーストラリアとニュージーランドでは資金調達額は前年比76%減、ディール件数は49%減と、さらなる減少傾向にあります。 ここで改めて日本の動向に着目すると、国内のベンチャー投資活動は減少している一方で、 データサービスPreqinによれば、海外投資家からのベンチャー投資は増加しているとのことです。日本には強力な学術機関と金融機関があるだけでなく、イノベーションや起業家精神の文化も長く続いており、政府もスタートアップ企業を大いに支援していることから、投資家から期待されており、大きな潜在能力があると言えます。2024年の資金調達額は58%増加しており、過去3年間で着実に成長してきたアグリフードテックへの資金調達の好調な傾向が続いています。日本は現在、バイオエネルギーとバイオマテリアル、クラウド小売インフラ、農場管理ソフトウェアへの多額の投資を特徴とする、3番目に大きなアグリフードテック投資市場となっています。 ステージごとの資金調達を見ると、シードラウンドは2024年の総ディール件数の43%を占め、ディール件数は前年比で13%減少したにもかかわらず、資金調達総額は13%増加しました。 シリーズAラウンドでは、前年比で調達資金額は約52%増、ディール件数は90%増となりました。さらに印象的な成長が見られたのはレーターステージのラウンドで、ディール件数は44 件と133% 増加し、昨年比で2 倍以上となりました。 ▼イベント・セミナーのお知らせ 「SusHi Tech Tokyo 2025」のアンバサダーに就任いたしました […]
Terraformation共催ウェビナーレポート

SDGインパクトジャパンは2024年11月20日、森林再生(Afforestation, Reforestation, and Revegetation:ARR)に特化したクライメートテック・スタートアップのTerraformationと共同で、自然資本とファイナンスに関わるウェビナーを開催しました。 今月は本ウェビナーで議論された内容を、弊社とお付き合いのある方にライティングいただきましたのでご紹介いたします。 本ウェビナーでは、気候目標に対する日本の動向や、Terraformationが手掛ける海外の森林再生プロジェクトの現状、NbS(Nature based Solutions/自然を基盤とした解決策)の特徴と意義、主要な投資家を含めた資金流入の現状、高品質なカーボンクレジットの評価方法などについて解説されました。その一部をレポートします。 <登壇者>ジョナサン・キム(Jonathan Kim)TerraformationChief Sustainability Officer TerraformationのClimate Impact Teamを率い、気候に関する目標を達成するために様々な企業・団体とのパートナーシップ連携を担当。それ以前は、アプリ内体験を創造するプラットフォームAppcuesを創業し、HubSpotや様々なメディアで活躍。Terraformationの製品責任者として、森林管理サービスの立ち上げを推進し、Seed to Carbon Forest Acceleratorの拡大に貢献。ハワイで生まれ育ち、ボストン大学でジャーナリズムの学位を取得。 広瀬大地株式会社SDGインパクトジャパンパートナー 外資系運用会社の後、独化学メーカーのCVCであるBASFベンチャーキャピタルでベンチャー投資に携わりつつ、経済学者のジャック・アタリ氏が創業する仏NGOのPositive Planetにおいてマイクロファイナンスの支援に携わる。その後、リネットジャパングループにおいて海外担当の常務執行役員、東南アジアに5年駐在し、同社の東証グロース市場上場を牽引する。その後、東証プライム上場のデジタルマーケティング企業の新規事業開発やクロスボーダーM&Aに従事、その後SDGインパクトジャパンに参画する。国際開発や金融包摂、環境などの社会課題解決に向けたファイナンスの仕組みの構築が主な関心。 森林再生はなぜ重要?直面する資金課題の解決策とは 初めのトピックは、気候目標に対する有効なソリューションである森林再生に必要なコストについて。広瀬氏は「木は、土を準備し植えるだけでは勝手に育たない。その後も成長するまで世話をし続ける必要がある」と語ります。育苗や植樹、その後の管理などの植林に必要なコストの他にも、計画書や報告書など、行政がプロジェクトを管理するための情報の提出も必要です。森林再生には多額の費用がかかります。 広瀬「森林再生に必要な費用と、実際の資金との間には大きなギャップがあります。森林再生のためには、現在、森林再生には年間約3,500億ドルが必要だと推定されています。公的部門と民間部門から提供されるのは合計で約500億ドルのみ。つまり、資金面で3,000億ドルのギャップがあり、それに対処する必要があります。」 この資金不足を解消する方法として重要であるのが、民間資本の動員。民間資本の資金調達において、特に鍵となるのがカーボンプライシングだと広瀬氏は語ります。 広瀬「気温上昇を一定の水準に収めるために必要なCO2排出削減量は、2040年までに4億tCO2から14億tCO2と試算されており、年間で最大1億tCO2となります。その実現のためには、カーボンプライシングをそれなりの金額に設定する必要があると言われています。」 カーボンクレジットには2種類が存在します。そもそもの排出量を減らす「Reduction(削減)」と、森林などにより空気中からCO2を吸収する「Removal(吸収・除去)」。広瀬氏は、森林再生は「Removal(吸収・除去)」に分類されるとして、「除去の方がコストがかかり、より多くの努力が必要となります。もし除去と削減の両方でカーボンプライシングを設定するならば、140ドル以上が必要になると試算されていまするでしょう」と試算しました。 次にカーボンプライシングの制度の現状について紹介がありました。を設定する方法の1つは、規制を設けること。現在75カ国がカーボンプライシングの設定を採用しています。EUではEU ETSシステム内で非常に多く、日本にはGX-ETS(GXリーグにおける排出量取引制度)と呼ばれる制度が現在議論されていますが存在します。現在はGXリーグと呼ばれる任意参加の制度を試行中で であるものの、2026年には一定量の特に温室効果ガスを多く出す企業において産業セクターにおいて参加が必須になります。 広瀬「現在のカーボンプライシングの平均は50ドルから60ドル程度です。1.5度目標を維持するためには、2030年までに200ドルから300ドルになる必要があると世界銀行が推計しています」 そして広瀬氏は、カーボンクレジットに関する世界の取り組みとして、パリ協定の第6条2項と第6条4項を取り上げます。このパリ協定に基づいて自国のGHG削減目標を設定する仕組みとしてNDC(Nationally Determined Contribution/国が決定する貢献)があります。パリ協定の6条.2項は二国間協定を結んで取り組む脱炭素プロジェクトです。広瀬氏は「パリ協定6条.2項のプロジェクトの実施件数が現在最も多いのは日本です」として、日本のJCM(Joint Crediting Mechanism/二国間クレジット制度)について次のように解説します。 広瀬「日本のJCMという仕組みはパリ協定6条.2項に準じており、現在、29か国が参加する日本政府と相手国政府との二国間協定を締結して実施されています。日本企業が国際的なプロジェクトに技術や資金を提供し、相手国における脱炭素のプロジェクトを推進するものです。創出された削減効果は日本と相手国のプロジェクト関係者で配分されます。このJCMメカニズムはアジア、中東・アフリカ、南米にも展開されており、日本とパートナー国の両国のNDCの目標に貢献します。新興国をはじめとする経済成長とともに排出が増加している国々のトランジションを支援するとともに、CO2の高排出国への需要に応え、、日本の排出削減にも貢献するこの制度は、今後さらに普及し、数年以内にさらに多くのプロジェクトが登場すると予想されます。」 広瀬氏が語ったカーボンクレジット市場の急速な成熟について、キム氏は「シンガポール、スウェーデンと並び、日本のJCMの二国間協定の進捗状況が最も進んでいると思います」と、日本が主導的な立場であることを強調。 キム「カーボンクレジット市場において、日本の取り組みは最前線にあると言ってもいいでしょう。日本の投資家は、こうした政策要因の多くを活用し、市場内でクレジットの需要創出とリスク軽減を考えているはずです。それは、おそらく他国と比較しても先端的な姿勢であると考えられます」 透明性がはるかに高まったNbSの“第2世代” そして話題はNbS(Nature based Solutions/自然を基盤とした解決策)に移ります。 キム「我々がなぜ森林再生に最も重きを置くのかをお話しましょう。NbSには、自然森の管理や沿岸の泥炭地の修復など様々な種類があります。バイオ炭(Biochar)のように、複数の課題に対応するソリューションも存在します。中でも、カーボン除去において特に大きな役割を果たせる手法が、森林再生なのです」 キム氏は、話題の技術として大気から炭素を回収するDAC(Direct Air Capture、直接空気回収技術)にも触れた上で、「DACの最大の回収量は、世界の1,000ヘクタールの森林よりも吸収する炭素量が少ない」と、そのインパクトの大きさを解説。「森林再生はカーボン回収のみならず、きれいな水や空気、生物多様性のような生態系への良い相乗効果も伴います。だからこそ、森林回復へ投資することの重要性を考えたいのです」 そして、投資を検討するにあたって見逃せないのがリスクです。キム氏は、NbSのボランタリークレジットについて指摘される品質の課題やネガティブな印象について「多くの新興市場がそうであるように、第1世代のカーボンプロジェクトもまた、多くの問題に直面した」と、第1世代にあった課題と第2世代でアップデートされた点を以下のように整理しました。 キム「第1世代では、コミュニティの利益への考慮のなさ、評価に優れた科学を適用・使用していないこと、生物多様性や回復力への過小評価が課題であったと言えるでしょう。しかし第2世代と呼ばれるプロジェクトは、コミュニティがインセンティブを得て利益を共有できること、科学や追加性の証明へのより厳しい審査などが求められます。確認する手段や技術が増えた第2世代は、投資家にとって透明性がはるかに高まったと言えるでしょう」 キム氏は合わせて、カーボンクレジット市場に大規模なファンドが登場していることにも言及。「Symbiosisのような連合が、2030年までに2000万トンを購入すると宣言しており、こうした多くの基金は、森林再生など第2世代のプロジェクトに注力しています」と、政府だけでなく地域社会まで巻き込み、高い品質基準を適用する姿勢を紹介しました。 これらの動きは、多くの利益のみならず、多くの資本を生み出す可能性を秘めています。しかしながら、資金を投じる第一歩を踏み出さずしてその資本は生まれません。ここでキム氏は再び、森林再生プロジェクトにおける重要な課題である初期の資金不足を説明します。 キム「木々が育つには長い時間がかかります。私たちが木々を植えるのは、違法な伐採や火災、放牧によって劣化した不毛地帯です。森林が自然には再生しない、人の助けが必要な地。それが私たちの活動の光景なのです。投資やインフラ整備のための資本が必要であり、カーボン除去が実際に測定結果に現れるまでには時間を要します。5年間の資金ギャップがあるのです。最初の 5 年間に資本の80%を費やし、その後、時間の経過とともに回収していけるようになります」 […]
新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。旧年中は格別のご支援を賜り、誠にありがとうございました。 おかげさまでSDGインパクトジャパンは、次世代の持続可能な社会の実現に向けた、イノベーションの促進と新たな資本の流れの創出というミッションのもと、昨年も多くの重要な取り組みを前進させることができました。 Thanks for reading SDG IMPACT JAPAN NEWSLETTER! Subscribe for free to receive new posts and support my work. ファンド事業では、上場株インパクトファンドの投資助言業を通じて、「カーボンニュートラル」「人的資本経営」「サプライチェーンの人権」「ジェンダー平等」といったテーマと企業価値向上について投資先企業と深い対話を重ねました。また、戦略パートナーと運営するベンチャーキャピタルファンドでは、新たな投資家の皆様のご参画を得て、アグリフードテックやサステナブルテックといった分野でポートフォリオ企業を拡充することができました。 インキュベーション事業では、インドネシアやモルドバにおける脱炭素プロジェクトやサステナクラフト社との連携を含む、質の高いカーボンクレジットの創出や調達に向けた枠組み作りを推進しました。また、企業のサステナビリティを「見える化」するRIMM社など有望スタートアップとの協業や、ムダレス社、Bio Engineering Capital社との資本業務提携など、多岐にわたる領域で新たな事業を展開することができました。本年も引き続き、挑戦を続けてまいります。 今年もサステナビリティに関連する数多くのテーマが、国内外で注目されることでしょう。環境分野では、気候変動への対応が引き続き重要な議題です。昨年のCOP29を受け、カーボンクレジットの活用や途上国への資金提供など、国際社会に具体的な行動が求められる年となると考えます。また、昨年の米国大統領選挙や欧州議会選挙の結果を踏まえながら、世界が協調して気候変動対策をブレることなく着実に進めていく胆力が求められています。日本においても、新たな温室効果ガス排出削減目標やエネルギー基本計画の実現、GXリーグやAZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)の推進などで、官民連携を深める必要があります。さらに、サーキュラーエコノミーや生物多様性といったテーマも、気候変動との関連性などから一層注目が高まり、議論が加速することが予想されます。社会分野においても、「人権」「人的資本」「ジェンダー」「ウェルビーイング」といった様々なキーワードが引き続き議論され、新たな規制や開示基準、経営指標が次々と提示されており、企業にとっては課題とともに新たな機会が生まれています。 これらの環境・社会テーマに対応するソリューションの需要は一段と高まると考えられる中、脱炭素化に向けた投資は加速化が必要であり、また課題解決に向けたイノベーションの中心となるべきスタートアップへの投資はここ数年グローバルで減少傾向にあります。未来に必要な技術やビジネスモデルの推進を支える資金の維持拡大が、今後さらに重要となります。 SDGsが掲げる幅広い目標の達成に向けて、企業が果たすべき役割はますます拡大しています。私たちは、先述のミッションのもと、ビジネスと金融の手法を活用しながらサステナビリティと経済成長の両立を目指して活動を展開してまいります。本年も、パートナー企業の皆様とともに、より良い未来の実現に向けて尽力してまいります。この一年が皆様にとって素晴らしい年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 株式会社SDGインパクトジャパン代表取締役Co-CEO前川 昭平 ▼イベント・セミナーのお知らせ 【告知】1/24開催:Tokyo Asset Management Forum 2025 2025年1月24日に開催予定の「Tokyo Asset Management Forum 2025」の「インパクト投資で描く資産運用の新時代」のパネルセッション(10:35-11:20)にマネージングパートナーの岡 由布子が登壇します。 主催:一般社団法人 東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)日時:2025年1月24日(水) 9:00-13:50形式:ハイブリッド開催(会場参加/オンライン参加)会場:KABUTO ONE HALL&CONFERENCE(東京都中央区日本橋兜町7-1)詳細&お申し込みにつきましては、こちらをご覧ください https://events-fincity.tokyo/tamf/2025/ 【実施報告】「Reforesting the World:世界の森の回復に向けてファイナンスができること」 森林再生(ARR)に特化したクライメートテック・スタートアップのTerraformationと弊社が共同で開催した自然資本とファイナンスに関わるウェビナーです。 Nature Based Solution (NbS)と呼ばれる自然資本と気候変動との関係から、主要な投資家を含めた資金流入の現状、日本の二国間(JCM)クレジットを含むカーボンクレジットの動向、Terraformationが手掛ける海外の森林再生プロジェクトの現状などについて共有しました。 【実施報告】Sustainability […]
COP29 レポート

COP29 レポート 今回11月11日からアゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29は、予定の会期を2日延長し24日に閉幕した。今回会議初日の首脳級会合に欧米、先進国の首脳が参加を見送ったことにより、COP29に関する報道はCOP28と比較しても少なく、話題性についても昨年より低調な印象があったが、参加者は登録ベースで6万8千人となり、COP28の10万人に次ぐ2番目の参加人数であった。会場に居る限り関心や熱気はむしろ高まっている印象があったが、ファイナンスCOPと言われた今回の会議の焦点でもある気候変動対策資金の議論に対して、先進国は及び腰であったのと対照的に途上国の真剣度がより高まっていたのかもしれない。 COP29の開催地となったアゼルバイジャン共和国は、北はロシアのダゲスタン共和国、西はアルメニア、南はイランと政治的に不安定な国々と国境を接しており、特にアルメニアとは係争地をめぐり2023年に紛争が起きたばかり。一方豊富な化石燃料資源や石油製品の輸出により、経済は2000年以降成長を続けており、安定的な政権基盤の礎となっている。バクーの街並みをみていると建物や通りは非常に美しく、この政治的安定、経済的繁栄は石油、ガスの輸出によってもたらされていることが想像できる。地政学的に不安定な地域でもバランスを取りながら安定的に統治されている同国を見ると、経済移行国や発展途上国が、まず経済の安定性や発展を重視しなくてはならない状況が良く理解できるし、多くの発展途上国にとっては、先進国が唱えるように一足飛びに再生可能エネルギーへシフトすることは経済的にも現実的な選択ではないのではないかと改めて考えた。 会期が延長された主な理由は、気候変動対策に関わる資金拠出に関わる問題であった。気候変動対策に関しては、先進国、途上国間での責任分担や資金の種類(長期資金、緩和資金、適応資金、損失と損害資金等)によっても、どの範囲までを先進国が負担すべきか等の意見の対立が目立つ。ロシアのウクライナ侵攻による欧州経済へのダメージ、来年アメリカの政権交代による気候変動政策の転換によって先進国の資金拠出の拡大は期待できない。今後は島しょ国、アフリカなど最も温暖化の影響を受けている気候変動への対応に脆弱な地域への適応対策に重点を置くなど限られた資金に優先順位を付けることが重要ではないか。 会議序盤は実現不可能とも思われる途上国からの資金支援の要求が出されていたが、COP29では2035年まで最低でも毎年3000億ドルの資金を先国が主導して確保することが最終合意された。この結論に関して途上国側の一部からは既に不満が示されているが、今までの目標値1000億ドルと比較すれば3倍の資金規模であり、このあたりが現実的な落としどころであったのではないかと思う。一方で資金拠出が充分ではない中でも気候変動対策を進めるために、今後は民間資金を如何に気候変動対策に引き込むかが重要な課題であり、そのような認識を前提とすればパリ協定6条の運用規則やガイドラインが合意された意味は大きく、カーボンクレジットを活用した民間資金の活用が途上国の気候変動対策の一助となり、地球全体としての温室効果ガスの削減に寄与することも充分に期待できる。日本でも政府案として2026年から国内企業間の排出権取引が開始されることが示され、今後カーボンクレジットとグローバルな気候変動対策が本格的に連動することになる。この制度は日本の温暖化対策にとっても世界にとっても重要な一歩になることを期待したい。(SDGインパクトジャパン 栗田) ▼イベント・セミナーのお知らせ Grow Impact Accelerator Demo Day 11月21日に第5回目のGROW Impact Accelerator Demo Dayがシンガポールにて開催されました。当アクセラレータープログラムはAgFunderとGROWのチームと一緒に推進しているもので、フードセキュリティ、持続可能なフードシステム、気候変動における重要な課題に取り組むアグリフードテックのスタートアップを育成するためのプログラムです。今回で最後のプログラムになりましたが、今まで39社のスタートアップを支援してきました。 詳細につきましては、こちらをご覧ください https://gogrow.co/the-grow-accelerator/ Asia-Pacific AgriFoodTech Investment Report 2024 戦略パートナーであるAgFunderが「Asia-Pacific AgriFoodTech Investment Report 2024」を発行しました。アジア太平洋地域(APAC)におけるアグリフード・テックの資金調達は、過去数年は2021年に資金調達金額が急上昇した反動もあり低水準で推移していましたが、2024年には目覚ましい回復を見せました。2024年10月末現在、APACのアグリフードテックのスタートアップは約42億ドルの資金を調達しており、2023年の同時期に調達した31億ドルから38%増加しています。詳細につきましてはこちらのリンクよりフルレポートをご覧いただけます。 https://agfunder.com/research/asia-pacific-agrifoodtech-investment-report-2024/ ▼SIJの活動状況・ニュース インドネシア水力発電への投資とJCMクレジットの推進へJパワーと共同出資会社を設立 インドネシア国の水力発電事業会社であるPT Mulya Energi Lestari社への出資と、同社が運営する発電事業から創出される二国間(JCM)クレジットの取扱いに向けて、電源開発株式会社(Jパワー)と共同で株式会社アイル・インドネシアを設立しました。 リリースはこちらから 2023/11/13 リリース 製造業脱炭素化支援ベンチャーのムダレスと資本業務提携 当社は、製造業への脱炭素化・省エネサービスを提供する株式会社ムダレス(本社:東京都目黒区、代表取締役:廣松茂、以下「ムダレス」)へ出資するとともに、事業連携に向けた資本業務提携を締結しました。当社はムダレスとの協業を通じて、脱炭素社会の構築に貢献して参ります。 リリースはこちらから 2023/11/22 リリース ▼そのほかのニュースはこちら https://sdgimpactjapan.com/jp/news/ ▼Link 株式会社SDGインパクトジャパン ▶ウェブサイト ▶LinkedIn 株式会社RIMM Japan ▶ウェブサイト ▶LinkedIn
AgFunderと共同で"Japan AgriFoodTech Exchange 2024" を開催

SDG Impact Japan×AgFunder×CIC Tokyoがアグリ・フードテックイベント『Japan AgriFoodTech Exchange 2024 – Innovation beyond borders-』を開催 SDG Impact Japanは9月26日、AgFunderおよびCIC Tokyoと共同で、アグリ・フードテック(AgriFoodTech)のスタートアップや事業会社、投資家などが一堂に会するイベント「Japan AgriFoodTech Exchange 2024 – Innovation beyond borders-」を開催しました。本稿では、同イベント内の「VENTURE CAFÉ」で行われた2つのセッション『国内外のプレイヤーと語る日本のAgriFoodエコシステムの現在地とこれから』『海外で挑戦する日本のAgriFoodTechイノベーターから見た日本市場の未来』の一部をレポートします。 日本の AgriFood エコシステム、現状と未来への課題とは? セッション1のテーマは、「国内外のプレイヤーと語る日本のAgriFoodエコシステムの現在地とこれから」でした。モデレーターは株式会社UnlocX取締役の住朋享氏が務め、Beyond Next Ventures Partnerの有馬暁澄氏、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社社長付部長の前田匡毅氏、三菱UFJ銀行執行役員営業第五部長の小杉裕司氏の3名がパネリストとして登壇。日本のAgriFoodTechの可能性と、そのエコシステム構築の在り方について熱い議論が交わされました。 スペインに見る成功事例と日本の強み 注目すべきは、世界的なフードテックイベント「Food 4 Future」での日本の存在感です。食の都として知られるスペイン・バスク州のビルバオで開催されるこのイベントは、世界中から9,000人もの関係者が集まる一大イベント。2023年は日本がパートナーカントリーとして迎えられ、プログラム中の「Japan session」は大好評のうちに幕を閉じました。 美食の国スペインが、なぜ日本に注目するのでしょうか。イベントでの熱気を肌で感じた住氏は、「日本で脈々と引き継がれてきた食の伝統、食へのこだわり、そして技に対する憧れと期待がある」といいます。しかしながら、そんな世界からの期待に対して、日本はまだそのポテンシャルを発揮できていない現状があるそうです。 日本のAgriFoodエコシステムの現状と課題 では、日本のAgriFoodエコシステムは、世界と比較してどのようなフェーズにあるのでしょうか。パネリストからは、投資額やスタートアップ数の増加といった明るい兆しがある一方で、ユニコーン企業の少なさや、海外と比較した成長スピードの遅れといった課題も指摘されました。 AgriFood Techに特化した投資に注力するベンチャーキャピタリストの有馬氏は、「日本のAgriFood Techへの投資は、世界と比較して5~6年ほど遅れている」と指摘します。その一方で、「近年は大企業によるCVC設立や、政府によるスタートアップ支援プログラムなど、官民双方でエコシステム構築に向けた動きが加速しています。特に、官の取り組みは、海外と比較しても前向きであると感じています」と語り、明るい兆しもあることを示しました。 US型?EU型?日本のエコシステムの向かう先 議論は、日本のAgriFoodエコシステム構築のあり方へと展開していきました。 世界的に見ると、スタートアップが急成長してイグジットを目指す「US型」と、企業間や官民の連携によるクラスターを形成しながら共存を目指す「EU型」のエコシステムが存在します。 有馬氏は、「EU型からスタートすると、会社がゾンビ化してしまうでしょう。日本はまずUS型のエコシステムを構築し、世界で戦えるユニコーン企業を生み出すことが先決です」と主張します。そのうえで、「まずはスタートアップが自律的かつイノベーティブに成長できる環境を整備し、AgriFood領域のGAFAのような世界を目指すことが理想的です」と提言しました。 一方、小杉氏は、大企業とスタートアップの新たな連携モデルとして「ベンチャークライアントモデル」を提唱します。これは、大企業が単にCVCで投資を行うのではなく、スタートアップの製品・サービスを積極的に活用することでその成長を支援するという手法です。 小杉氏は、「大企業はスタートアップにとって、製品の技術的な要求を満たしたり市場に出ていくためのプロセスを磨いたりする機会を与えてくれる最高の顧客でもあるわけです。スタートアップにとって何よりのアワードであると同時に、おのずと大企業側の事業部も巻き込みながらシナジーを生める関係性になります」と、そのメリットを強調しました。 「日本人は普通のことを普通にちゃんとやってくれる」と語る前田氏は、日本独自のAgriFoodエコシステムの可能性に言及しました。 前田氏は、「日本のAgriFood Techは、世界で戦うことだけを目標にするのではなく、日本の食文化や農業の持続可能性にも貢献できる産業を目指すべき」と主張。「そのためには、日本の歴史や風土に根ざした独自のFoodTechを紐解き、光を当てていくことが重要ではないでしょうか」と提言しました。 未来のAgriFoodTechプレイヤーに向けて 議論の最後に、パネリストたちは日本のAgriFood Techの未来に向けて、それぞれの想いを語りました。 有馬氏は、「AgriFood Techに関心のある方々は、高い意識を持って話を聞いてくれているはずです。その方々が中心的な役割を担えるようになれば、世界は変わります。ですから皆さん、ぜひ偉くなって、5年後、10年後の世界を変えていきましょう」とエールを送りました。 […]