先日、9月19日に開催されたOpenStar Technologiesのセミナーに参加しました。会場では、ニュージーランド発の若い核融合スタートアップが描く未来像に、参加者が熱心に耳を傾けていました。
世界ではいま、「夢のエネルギー」と呼ばれる核融合への期待が急速に高まっています。核融合とは、太陽が輝く原理と同じく、軽い原子同士を融合させて膨大なエネルギーを取り出す仕組みです。二酸化炭素を出さず、燃料も海水に豊富に含まれる水素から得られるため、もし実用化できれば地球のエネルギー問題を一気に解決できると考えられています。
これまで主役だったのは、フランスで建設が進む国際熱核融合実験炉(ITER)や、日本のJT-60SAといった巨大プロジェクト。ITERは総工費2兆円規模、JT-60SAも数千億円規模という国家級の取り組みです。一方で、民間の核融合スタートアップも急増しています。Fusion Industry Association(FIA) の報告によれば、2025年7月までの12か月間で、核融合関連企業は 26.4億ドル($2.64 billion) の資金調達を行ったとされています。また、対象となる 53 社の核融合企業の総調達額は 約 97.66 億ドル($9.766 billion) に達しており、2021 年以降で約 5 倍に成長していると記されています。「2040年代」ではなく「2030年前後の商用化」を目指す動きが世界中で広がっているのです。
OpenStar TechnologiesはSDGインパクトジャパンのパートナーVCであるIcehouse Venturesの投資先で、昨年12月にわずか設立から2年未満、そして投資額1,000万ドル(約16.9億円)未満で、核融合の最初のマイルストーンであるプラズマ生成(ファーストプラズマ)に成功したのです。これは従来、数千億円規模の国家プロジェクトが挑んできた領域であり、そのスピード感とコスト効率の高さは驚きを持って受け止められています。OpenStarは、主流のトカマク型やレーザー型ではなく、リバイテッド・ダイポール方式というユニークな方式に挑んでいます。これは、地球が磁場で太陽風を閉じ込めている仕組みをヒントにしたもので、中央に浮かせた超伝導コイルが磁場を形成し、プラズマ(超高温のガス)を安定的に閉じ込めるというものです。
実はこのリバイテッド・ダイポール方式のコンセプトは日本発祥なのです。物理学モデルは、1987年に故・長谷川晃教授によって提唱され、日本初のリバイテッド・ダイポール装置「RT-1」は東京大学院にて建設されました。さらにOpenStarは、2024年6月に京都フュージョンエンジニアリングと次世代核融合装置の実現に向けた協力関係を開始する覚書(MOU)を締結しました。 。
核融合業界はいま、数兆円規模の国際プロジェクトから数百億円規模のスタートアップまで、多様なプレイヤーが競い合う「群雄割拠」の時代にあります。OpenStarのように、日本発のコンセプトを引き継ぎ、ニュージーランドの開放的な政策の下で成長を目指す企業は、エネルギーの未来を描く新しい流れの象徴といえるでしょう。
▼SIJの活動状況・ニュース
▽10月2日に当社Co-CEOの前川が、大阪関西万博で行われる「SDG’s beyond the future society for Life」に登壇いたします。
弊社の事業の全体像や、インドネシアにおけるJCMの取り組みについてご紹介をする予定です。
会場:大阪関西万博インドネシアパビリオン
日時:2025年10月2日 16:00-18:00
▽当社CISO(最高投資戦略責任者)であるサシャ・べスリックが、「European Energy Independence through Investing in Renewables」に寄稿しました。
本書では、欧州がEUと国家主権の基盤、経済的回復力、気候変動対策におけるリーダーシップとして、エネルギー自立をいかに緊急に追求しているかを掘り下げています。高まる地政学的緊張と加速する気候危機の中で、持続可能でエネルギー安全保障が確保された未来への道筋として、再生可能エネルギー投資への大胆な転換を提唱しています。
European Energy Independence through Investing in Renewables
▽当社CISO(最高投資戦略責任者)であるサシャ・べスリックが、8月28日と29日で開催された「Valuismカンファレンス2025」で「Circularity and Future Models for Value-Creating Systems」のパネルに登壇いたしました。
▽SDGインパクトジャパンは、環境省が実施する「令和6年度二国間クレジット制度資金支援事業のうち設備補助事業」に採択されました。
本事業は、インドネシア西ジャワ州において、家畜糞尿由来のバイオガスの生成設備を導入し、ジャカルタ及びバンドン近郊に所在する工場に供給することで、天然ガスからバイオガスへの燃料転換を促し、温室効果ガス(GHG)の排出削減を実現するものです。
▽当社Co-CEO 小木曽麻里が、Forbes Japanのインタビュー記事「多様性こそ事業成長の鍵──女性VCと女性起業家が切り拓く新たな投資の形」に掲載されました。
https://sdgimpactjapan.com/jp/our-co-ceo-mari-kogiso-featured-in-forbes-japan/
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