2024年のサステナビリティ開示の注目点

June 28, 2024

当社とシンガポールのRIMM Sustainabilityのジョイントベンチャーである株式会社RIMM Japanは、サステナビリティ評価サービスを提供しています。今回はRIMM Japanの取締役会長・山下氏よりコラムをお届けします。

▼2024年のサステナビリティ開示の注目点

1. 2024年開示ルールの動向

国際的な動向

2024年は、サステナビリティ情報開示における重要な転換期として位置づけられることになりそうです。既に欧州連合(EU)の「CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)」が1月に施行され、また、「CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism、炭素国境調整措置)」の移行期間も開始されています。また米国でも証券取引委員会(SEC)は、気候変動リスク情報を含む非財務諸表並びに財務諸表の最終規則を3月に公表しました。一部の効力発生が停止されているものの、全米ベースでの規則が制定されたことになります。

EU、米国共に政治的動向が短期的にGXやSXの動きに影響を及ぼしていくことが予想されるものの、過去からの潮流が消えることはないものと思われます。

国内における動向

国内では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が3月にサステナビリティ開示基準の公開草案を公表し、25年3月には最終案を制定することとなりました。この基準は、IFRS S1号およびS2号をほぼそのままの形で取り込んでおり、国内企業に対する情報開示の義務化が進むことになります。実際の適用に関しては、対象範囲並びに適用時期の議論が行われています(金融庁資料参照)。

2. 2024年日本企業が取り組むべきこと

SSBJ基準の正式適用は、大企業についても2027年以降と想定されていますが、実際にはそれを前倒しした形での実質的な適用が進むものと見込まれます。既に国内企業にも大きな影響力を持つCDPは、昨年2023年の調査数を1,000社上回る3,300社に対して質問を送付したことが明らかになっています。

東証プライム企業の総数は1,644社であることを考えれば、その2倍以上の企業にも開示の要請が行われていることになります。また、CDPの質問項目のカバー領域は広範囲にわたっており、既に気候リスクのみならず生物多様性などの項目も取り込まれています。特定の大規模企業以外にも開示の波は寄せてきていると言ってよいでしょう。

2024年の取り組みにあたって、3点ポイントをまとめてみました。

i. 有価証券報告書への注目度の高まり

金融庁は、有価証券報告書のサステナビリティ情報の充実に大きな関心を寄せています。それを受けて2024年度も昨年と同様にこの分野への評価を重点的に行うとしています。今年度の主要調査項目として、サステナビリティ関連では、①サステナビリティに関する考え方及び取り組みの開示、②女性管理職比率の開示及び当該比率算定上の管理職の範囲、③取締役会・監査役会等の活動状況の開示の3点が示されています。投資家からの注目度も高い分野であり、根拠を持った丁寧な記載が求められています。

ii. CSRDへの対応

CSRDは、EUで一定規模以上の事業を行う域外企業にも適用されています。日本は輸出量では、輸送用機器の28%、一般機械の21%、電子機器の16%がEU向けであり、CBAMとともにCSRDへの対応準備を急ぐ必要が有ります。特に、CSRDでは「ダブル・マテリアリティ原則」に基づく詳細な情報開示が求められている点は留意が必要です。企業活動が環境・社会に与える影響だけでなく、外部環境が企業の業績や財務状況に与える影響についても開示しなければならないということです。

必要なデータ項目の確認と整備をはじめ、本格展開までに残された時間での準備を急ぐ必要が有ります。また、CSRDでは今後、開示内容についての保証が求められることが予定されています。保証については、国内での取り扱いについて2025年以降議論が開始される予定です。いわゆるグリーンウォッシングのチェックは投資家からも強く期待される項目であり、国内でも必須となるものと見込まれます。事前の準備として、今からでも開示内容の根拠(エヴィデンス)をデータ化し保持する体制整備を行うべきでしょう。

iii. SSBJ基準(S1/S2)への準備

国内では2024年度中に、SSBJ基準が正式に決定される予定です。若干の修正はあるにせよ、基本はIFRS S1号、S2号を引き継ぐものとなります。S1号は「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般要求事項」であるのに対し、S2号は「気候関連開示」となっています。それぞれを、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標(targets)」の4項目に分けて記載することが求められています。

S2においては、気候関連指標として温室効果ガスのScope3の開示、内部炭素価格、気候関連指標と報酬への反映についての説明も求められており、新たな取組が必要となる企業も多いものと思われます。

3. RIMMサービスのご紹介

株式会社SDGインパクトジャパンとシンガポールのRIMM Sustainabilityのジョイントベンチャーである株式会社RIMM Japanは、サステナビリティに関する情報の収集と視える化を実現するサービス提供を行っています。

RIMMの特徴

RIMMの提供するサステナビリティ評価サービスとして、次の特徴があります。

1.サステナビリティ全般(ESG全領域)を対象
  GHG排出だけでなく、人的資本、ガバナンスの含めた評価

2.業種ごとに、国際基準に基づいたアセスメント
  業種特性に応じた質問を、15種以上の国際基準から選別提案
  質問に回答することで国際基準準拠のアセスメントが完了

3.同業他社との比較による評価
  同業他社との比較により、自社の課題を容易に把握
  他社水準の確認が可能 

4.Webの上で、データ収集・アセスメント・評価・レポートを提供
  グループ企業等、分散しているデータの一元化
  各チームの共同作業でアセスメント完成

RIMMを使えば、自社内に専門家や専門チームを持たない企業でも、自らの状態を視える化することができます。また、項目ごとの他社比較によって、自社の有意な点や改善が必要な点を把握し、企業価値向上への取り組みに着手することができます。また、SaaS方式での提供ですので、どのポイントを改善すれば全体でどのような評価になっていくのかをシミュレーションすることもできます。
こうした特徴を利用したいくつかのユースケースをご紹介します。

新たな基準への対応準備

RIMMを利用することで、今までに対応していなかった新たな基準への準備が可能になります。現状保有している情報をベースに、CSRDなどの基準のアセスメントを行うことで、どの情報が不足しているか、どのような枠組みが必要になるかのギャップ分析を行うことが可能です。また、アセスメントを行う際に、バックデータを収集する機能を有しています。その機能を利用し、今後、保証が必要とされた場合の準備を進めることも可能です。

自社独自のアセスメントへのカスタマイズ

自社グループやサプライチェーンのサステナビリティ評価を行う場合、国際基準に基づいたアセスメントに加えて、自社が必要と考える項目を追加することで、自社オリジナルのアセスメントにカスタマイズすることが可能です。
自社グループのポリシーやルールの適用状況の確認や、自社グループ取引先の状況把握にためにオリジナルの設問を追加することで、自社のニーズに合ったデータの集積やモニタリングが可能となります。RIMMの柔軟なシステム構成を利用し、スムースなカスタマイズを実現します。

RIMMのサービスは、貴方の会社のサステナビリティを可視化します。お問い合わせは以下のホームページから、もしくはメールでお願いします。

RIMM Japan HP:  https://www.rimm-japan.com/ 
お問合せメール: jpinfo@rimm.io

▼イベント・セミナーのお知らせ

Fermata x SDG Impact Japan セミナー開催のお知らせ

7月4日に日本最大規模のフェムテック関連イベント「Femtech Fes」を主催されている業界のリーディングスタートアップであるFermata様とフェムテック市場概況と今後の展望について共同イベント開催を予定しています。

■タイトル:『国内外の市場動向・事業事例から読み解く、フェムテック市場のモメンタムとポテンシャル』
■ 日時:2024年7月4日(木)18:00~20:00 ※受付は17:45から開始いたします
■ 会場:WHEREVER 2階(〒106-0032 東京都港区六本木7-2-8)
■ 定員数:20人 
※1社2名までご参加いただくことが可能です。お申込みは先着順で締め切らせていただきます。
■ 参加費:無料

当イベントにご関心がございましたら、弊社までお問い合わせください。

▼SIJの活動状況・ニュース

双日との資本業務提携のお知らせ

双日株式会社と温暖化対策・低炭素事業の共同検討に向けて資本業務提携いたしました。途上国における再生可能エネルギー事業などにおいてカーボンクレジットを創出する事業や脱炭素・循環型社会につながる領域のスタートアップ関連事業での協業について、共同で検討を進めます。

リリースはこちら
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Wataru Baba

Senior Fellow, Climate and Sustainability at Panasonic Group since 2022, where he accelerated the company’s growth through an integrated strategy for creating positive impact on climate change and established Sustainability Committee, chaired by the Group CEO. Board Member of Japan Professional Football League (J.League) and Independent Director for a civic technology nonprofit, Code for Japan, and a web3 startup, Financie, Inc