二国間クレジットの最新状況

July 31, 2024

SDGインパクトジャパンは、世界の気候変動対策に向けて新たな資金の流れを作るために脱炭素・カーボンクレジット事業を推進しています。この度、本事業の一環として取り組んでいる二国間クレジット(Joint Crediting Mechanism:JCM)の創出に向けた新たな取り組みを開始しました。

SDGインパクトジャパンでは昨年度より、経済産業省(METI)の委託を受けて、モルドバ共和国におけるエタノール蒸留残渣を利用したバイオガス化事業に向けたJCM実現可能性調査を実施してまいりました。

この調査の結果、モルドバにおいてエタノール蒸留残渣を活用したバイオガス生成のプロジェクトが、この度NEDOのJCM実証事業の採択を受け、今年度より実証に向けたより具体的な調査計画を開始します。本事業では日本の優れた低炭素技術・システムの普及拡大と温室効果ガス削減を目的として、最大10億円の予算で7年間の期間に渡り脱炭素プロジェクトの実施とJCM創出を実証します。

2024年度「二国間クレジット制度(JCM)等を活用した低炭素技術普及促進事業/低炭素技術による市場創出促進事業(実証前調査)」に係る実施体制の決定について

本コラムではJCMクレジットについて簡単なご紹介と、JCMに対する取り組みを当社はどのように位置付けて推進しているのかをご紹介します。

  1. 二国間クレジットとは

    1. JCM制度の概要

      JCMは2011年より日本が主導的に推進している、先進国と開発途上国の温暖化対策の協力的スキームです。主に途上国で構成されるパートナー国で実施される温室効果ガス削減プロジェクトに、日本が官民で技術や資金を支援し、その成果としてのCO2排出削減量を貢献度合いに応じて分配する制度となっています。

      JCM制度で生み出されるCO2排出削減貢献は「JCMクレジット」として移転可能なカーボンクレジットとなり、現地国だけでなく、相当調整を経て一部が日本側にも割り当てられ、日本のNDC貢献やGXリーグや温対法での活用などが可能になります。

      エネルギー需要が旺盛で炭素排出が高まる一方で、一層の脱炭素を推進が求められる新興国において、脱炭素トランジションを果たすために必要な資金を手当する一助となるJCMへの注目は高まっており、世界で29カ国(2024年7月現在)がJCMパートナー国として日本と合意締結しています。

    2. パリ協定6.2条

      JCMの一つの特徴は、「パリ協定6条2項(Article 6.2)」というパリ協定下の国際的な気候変動緩和アプローチに準拠していることです。パリ協定6条2項に準拠することにより、これまでの民間認証のクレジットとは異なり、日本及びパートナー国のNDCの達成にJCMクレジットが寄与することになります。

      パリ協定6条2項準拠のクレジットはJCMが案件数・パートナー国数ともに日本が最も進んでいますが、近年ではスイスやシンガポール、韓国なども各国とパートナーシップを締結し、6.2条クレジットの創出を推進しています。また、VerraやGoldstandardといった民間認証のボランタリークレジットにおいてもArticle 6.2に準拠したクレジットの発行を進めており、ルワンダのCook Stobeのプロジェクトにおいて「Article 6」ラベルをつけたVerraのクレジットの発行の取り組みが行われています。

      JCMは「パリ協定6条2項」の協力的アプローチに先鞭をつけた国際的なカーボンクレジットの取り組みであり、上記の通り様々なプレイヤーが近年高い関心を示しています。

  2. 当社が二国間クレジットに取り組む意味

当社は脱炭素・カーボンクレジット事業において、JCMクレジットの創出に注力しています。前述のモルドバ以外にも、インドネシアでの小水力発電の開発のほか、東南アジア・中央アジア・東欧などを中心にJCMパートナー国においてJCMクレジットの創出を支援するためのプロジェクト形成をすすめています。

JCMは日本のNDC達成を目指すために重要な取り組みの一つとして位置付けられており、2030年までに官民連携で1億トンものJCMクレジットの創出を目標として掲げられています。また、JCMは日本だけに被益するものではなく、先進国である日本からパートナー国である新興国に対して、脱炭素を推進するために必要な資金の流れを作る仕組みとしても機能します。

当社はサステナブル・ファイナンスの推進を掲げ、様々な社会・経済の持続可能性に推進に資する資金の流れを作ることを目指しています。JCMはカーボンクレジットとしてコマーシャルに今後の需給バランスに応じて経済的価値の向上が期待できるものという側面はあります。また同時に、新興国の脱炭素に向けた資金の流れを生み出し、世界の気候変動の緩和に貢献するという国際開発・環境の側面から意義の大きい取り組みと認識しています。

JCMやカーボンクレジットについて関心がある、当社の取り組みをより詳しく聞きたい、等のご要望がございましたらぜひ当社ウェブサイトよりお問い合わせください。

▼イベント・セミナーのお知らせ

SIJはfermata株式会社と、フェムテックに関心を寄せるビジネスパーソン向けに7月4日、『国内外の市場動向・事業事例から読み解く、フェムテック市場のモメンタムとポテンシャル』と題したイベントを共催しました。
イベント前半では、fermataの代表取締役CEOで公衆衛生博士でもある杉本 亜美奈 氏とSIJのジェンダーインパクトファンド ファンドマネージャーを務める増渕 翔 が登壇し、フェムテックの概要と現在地、今後の展望を解説。後半では、『日本のフェムテック市場を加速させるために必要な連携・施策とは何か?』をテーマに、参加者を交えて活発に討論しました。

▼SIJの活動状況・ニュース

現在当社ではジェンダー領域に特化した「ジェンダーインパクトファンド*」の立ち上げに向けて活動しています。サステナブルメディアのcokiに、ジェンダーファンド立ち上げメンバーのインタビュー記事が掲載されましたのでぜひご覧ください。

https://coki.jp/sustainable/esg/38763/

*ファンドの運用はSDGインパクトジャパンの100%子会社であるSIJ Capital合同会社が行う予定です。

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Wataru Baba

Senior Fellow, Climate and Sustainability at Panasonic Group since 2022, where he accelerated the company’s growth through an integrated strategy for creating positive impact on climate change and established Sustainability Committee, chaired by the Group CEO. Board Member of Japan Professional Football League (J.League) and Independent Director for a civic technology nonprofit, Code for Japan, and a web3 startup, Financie, Inc