【イベントレポート】SDG Impact Japan×fermata 『国内外の市場動向・事業事例から読み解く、フェムテック市場のモメンタムとポテンシャル』

株式会社SDGインパクトジャパン(以下、SIJ)はfermata株式会社(以下、フェルマータ)と共催で、フェムテックに関心を寄せるビジネスパーソン向けに7月4日、『国内外の市場動向・事業事例から読み解く、フェムテック市場のモメンタムとポテンシャル』と題したイベントを開催しました。今月のニュースレターでは本イベントの開催レポートをお送りいたします。 イベント前半では、フェルマータの代表取締役CEOで公衆衛生博士でもある杉本 亜美奈 氏(以下、Amina)とSIJのジェンダーインパクト投資の企画を務める増渕 翔 氏が登壇し、フェムテックの概要と現在地、今後の展望を解説。後半では、『日本のフェムテック市場を加速させるために必要な連携・施策とは何か?』をテーマに、参加者を交えて討論しました。 登壇者 fermata株式会社代表取締役CEO 公衆衛生博士 杉本 亜美奈 氏 東京大学修士号、London School of Hygiene & Tropical Medicine (英) 公衆衛生博士号取得。福島第一原子力発電所事故による被災者の内外被曝及び健康管理の研究を行い、東京電力福島原子力発電所事故 調査委員会(国会事故調)のメンバーでもある。日本医療政策機構にて、世界認知症審議会 ( World Dementia Council ) の日本誘致を担当。厚生労働省のヤングプロフェショナルメンバーにも選ばれ、「グローバル・ヘルスの体制強化:G7伊勢志摩サミット・神戸保健大臣会合への提言書」の執筆に関わる。近年、Mistletoe 株式会社に参画。また、元 evernote CEOのPhil Libin 氏が率いる AIスタートアップスタジオ All Turtlesの元メンバーでもある。 株式会社SDGインパクトジャパン増渕 翔 氏 大学在学中に教育分野で起業(PBL・アクティブラーニング型教材の開発)。卒業後はベンチャー企業を経て株式会社グロービスに入社。シードステージのスタートアップ向けアクセラテータプログラムの立ち上げ・運営に従事。2021年よりグロービス・キャピタル・パートナーズにて投資関連業務に従事。慶應義塾大学総合政策学部卒。 女性の健康課題による経済損失、潜在ニーズ合わせると4.5兆円 Amina:「フェムテック」という言葉ができたのは2016年頃で、私たちフェルマータが2019年に初めて日本にその言葉を紹介しました。日本のフェムテック市場ではフェムケア商品への特化が見られますが、本質的なフェムテック市場は女性特有の健康課題だけにとどまらず、女性に出やすい症状や罹患率が高い傾向にある疾患などの健康課題をテクノロジーの力で可視化し、解決するために生まれる製品やサービスも含まれる市場とご理解ください。 最近になって経済産業省から女性の健康課題が日本社会に及ぼす経済損失について「3.4兆円」という数字が出されました。しかし2019年当初はまだ、女性の健康課題に取り組まないことがどれほどの経済損失に繋がるのかを国も把握していない状態でした。 さらに3.4兆円という数字が出されたものの、フェムテックのシードのマーケットはあくまで「可視化されている健康課題」へのソリューションを提供しているにすぎません。未だ可視化されていない潜在的な課題に起因する経済損失も合わせると、そのインパクトはさらに拡大する可能性がある領域だと言えるでしょう。 ジェンダーギャップを背景に生まれた「フェムテック」という言葉 Amina:グローバルなフェムテック市場の成長率はおおよそ8.8~14%と言われています。医療機器の市場成長率が5.5%ぐらいですので、それに比べてかなりの成長率が期待されていると言えるでしょう。市場規模は100兆~150兆円という数字も出ています。 ただ、ベンチャー投資の世界は圧倒的に男性が主体です。世界では「女性だけで設立された企業がベンチャーキャピタルから手にした調達額の割合」は3%未満、日本でも「資金調達上位50社のうち創業者か社長に女性が含まれる企業が手にした調達額の割合」は2%にとどまっています。また、世界の医療研究業界におけるジェンダーギャップも大きく、「医学研究資金のうち妊娠、出産、女性の生殖健康に費やされる割合」は2%にすぎません。 このようなジェンダーギャップがある中、「女性の健康課題を解決する製品・サービスにニーズがある、ビジネスの可能性がある」ことを示すために生まれた言葉が「Femtech(フェムテック)」でした。 2023年にノーベル経済学賞を受賞したハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授は、米国の女性の生年ごとにグループ分けして、「家庭、仕事、キャリアをどのように選択する傾向があるか」を表しました。ここで言う「仕事」は、生活の必要性に迫られてする仕事、「キャリア」は自己の成長のための選択と考えるとよいでしょう。教授は、生年1958年以降の第5グループはキャリアも家庭も選択できる女性が増えてきていて、生年1978年以降の第6グループはどんな選択をするだろうと問いかけています。 これを日本に当てはめたとき、私はまだ日本は第6グループまでたどり着いていないと思うのです。しかし私たちの選択肢や生き方は確実に変化してきている。そのギャップを埋めるために、フェムテックが必要とされているのではないでしょうか。 こうした背景のもと、日本でも「フェムテック」という言葉が認知され始めたのだと思います。ただ一方で、フェムケアが中心で「テック」が浸透していないという点が、日本でフェムテック領域のバリエーションを感覚的に停滞させる要因になっているとも思います。 医療とテックのマッチングが課題 増渕:フェムケア商品が流行ったことは良かったと思います。そこにテクノロジーをどう掛け合わせていくかを考えると、フェムテックへの資金供給がまだ不十分です。グローバルで見ると2024年時点で約15件のIPOと約150件のM&Aが出ていて、スタートアップから社会に対してインパクトを生む企業へと成長しています。一方、日本ではフェムケア商品にとどまっているがゆえに、スケール感がない状態。グローバル同様、日本でもフェムテックへの投資が必要であると見ています。 日本のスタートアップも海外のスタートアップも、企業家の能力にはあまり差がないように感じていますが、このスケール感の違いはどこに起因しているのでしょうか? Amina:いくつか要因はあると思いますが、日本はヘルステック領域にあまり強くないということが挙げられます。国民皆保険なので病院を受診しても費用はそう高くなりませんし、遠隔で受診するより直接行ったほうが安いし、早い。他にも理由はありますが、現行のヘルスシステムも医療のデジタル化があまり進まない要因だと私は思います。 とりわけ産婦人科のクリニックは現在、日本国内に2500軒ほどですが、年間約5%のペースで減少しています。歯科医院の6万軒などと比べて競争がほぼない。そうした状況下で、産婦人科の医師がオンライン診療に乗り出して差別化を図ろうという発想にはなかなかなりません。 […]

二国間クレジットの最新状況

SDGインパクトジャパンは、世界の気候変動対策に向けて新たな資金の流れを作るために脱炭素・カーボンクレジット事業を推進しています。この度、本事業の一環として取り組んでいる二国間クレジット(Joint Crediting Mechanism:JCM)の創出に向けた新たな取り組みを開始しました。 SDGインパクトジャパンでは昨年度より、経済産業省(METI)の委託を受けて、モルドバ共和国におけるエタノール蒸留残渣を利用したバイオガス化事業に向けたJCM実現可能性調査を実施してまいりました。 この調査の結果、モルドバにおいてエタノール蒸留残渣を活用したバイオガス生成のプロジェクトが、この度NEDOのJCM実証事業の採択を受け、今年度より実証に向けたより具体的な調査計画を開始します。本事業では日本の優れた低炭素技術・システムの普及拡大と温室効果ガス削減を目的として、最大10億円の予算で7年間の期間に渡り脱炭素プロジェクトの実施とJCM創出を実証します。 2024年度「二国間クレジット制度(JCM)等を活用した低炭素技術普及促進事業/低炭素技術による市場創出促進事業(実証前調査)」に係る実施体制の決定について 本コラムではJCMクレジットについて簡単なご紹介と、JCMに対する取り組みを当社はどのように位置付けて推進しているのかをご紹介します。 二国間クレジットとは JCM制度の概要 JCMは2011年より日本が主導的に推進している、先進国と開発途上国の温暖化対策の協力的スキームです。主に途上国で構成されるパートナー国で実施される温室効果ガス削減プロジェクトに、日本が官民で技術や資金を支援し、その成果としてのCO2排出削減量を貢献度合いに応じて分配する制度となっています。 JCM制度で生み出されるCO2排出削減貢献は「JCMクレジット」として移転可能なカーボンクレジットとなり、現地国だけでなく、相当調整を経て一部が日本側にも割り当てられ、日本のNDC貢献やGXリーグや温対法での活用などが可能になります。 エネルギー需要が旺盛で炭素排出が高まる一方で、一層の脱炭素を推進が求められる新興国において、脱炭素トランジションを果たすために必要な資金を手当する一助となるJCMへの注目は高まっており、世界で29カ国(2024年7月現在)がJCMパートナー国として日本と合意締結しています。 パリ協定6.2条 JCMの一つの特徴は、「パリ協定6条2項(Article 6.2)」というパリ協定下の国際的な気候変動緩和アプローチに準拠していることです。パリ協定6条2項に準拠することにより、これまでの民間認証のクレジットとは異なり、日本及びパートナー国のNDCの達成にJCMクレジットが寄与することになります。 パリ協定6条2項準拠のクレジットはJCMが案件数・パートナー国数ともに日本が最も進んでいますが、近年ではスイスやシンガポール、韓国なども各国とパートナーシップを締結し、6.2条クレジットの創出を推進しています。また、VerraやGoldstandardといった民間認証のボランタリークレジットにおいてもArticle 6.2に準拠したクレジットの発行を進めており、ルワンダのCook Stobeのプロジェクトにおいて「Article 6」ラベルをつけたVerraのクレジットの発行の取り組みが行われています。 JCMは「パリ協定6条2項」の協力的アプローチに先鞭をつけた国際的なカーボンクレジットの取り組みであり、上記の通り様々なプレイヤーが近年高い関心を示しています。 当社が二国間クレジットに取り組む意味 当社は脱炭素・カーボンクレジット事業において、JCMクレジットの創出に注力しています。前述のモルドバ以外にも、インドネシアでの小水力発電の開発のほか、東南アジア・中央アジア・東欧などを中心にJCMパートナー国においてJCMクレジットの創出を支援するためのプロジェクト形成をすすめています。 JCMは日本のNDC達成を目指すために重要な取り組みの一つとして位置付けられており、2030年までに官民連携で1億トンものJCMクレジットの創出を目標として掲げられています。また、JCMは日本だけに被益するものではなく、先進国である日本からパートナー国である新興国に対して、脱炭素を推進するために必要な資金の流れを作る仕組みとしても機能します。 当社はサステナブル・ファイナンスの推進を掲げ、様々な社会・経済の持続可能性に推進に資する資金の流れを作ることを目指しています。JCMはカーボンクレジットとしてコマーシャルに今後の需給バランスに応じて経済的価値の向上が期待できるものという側面はあります。また同時に、新興国の脱炭素に向けた資金の流れを生み出し、世界の気候変動の緩和に貢献するという国際開発・環境の側面から意義の大きい取り組みと認識しています。 JCMやカーボンクレジットについて関心がある、当社の取り組みをより詳しく聞きたい、等のご要望がございましたらぜひ当社ウェブサイトよりお問い合わせください。 ▼イベント・セミナーのお知らせ SIJはfermata株式会社と、フェムテックに関心を寄せるビジネスパーソン向けに7月4日、『国内外の市場動向・事業事例から読み解く、フェムテック市場のモメンタムとポテンシャル』と題したイベントを共催しました。イベント前半では、fermataの代表取締役CEOで公衆衛生博士でもある杉本 亜美奈 氏とSIJのジェンダーインパクトファンド ファンドマネージャーを務める増渕 翔 が登壇し、フェムテックの概要と現在地、今後の展望を解説。後半では、『日本のフェムテック市場を加速させるために必要な連携・施策とは何か?』をテーマに、参加者を交えて活発に討論しました。 ▼SIJの活動状況・ニュース 現在当社ではジェンダー領域に特化した「ジェンダーインパクトファンド*」の立ち上げに向けて活動しています。サステナブルメディアのcokiに、ジェンダーファンド立ち上げメンバーのインタビュー記事が掲載されましたのでぜひご覧ください。 https://coki.jp/sustainable/esg/38763/ *ファンドの運用はSDGインパクトジャパンの100%子会社であるSIJ Capital合同会社が行う予定です。 ▼そのほかのニュースはこちら https://sdgimpactjapan.com/jp/news/ ▼Link 株式会社SDGインパクトジャパン ▶ウェブサイト ▶LinkedIn 株式会社RIMM Japan ▶ウェブサイト ▶LinkedIn

2024年のサステナビリティ開示の注目点

当社とシンガポールのRIMM Sustainabilityのジョイントベンチャーである株式会社RIMM Japanは、サステナビリティ評価サービスを提供しています。今回はRIMM Japanの取締役会長・山下氏よりコラムをお届けします。 ▼2024年のサステナビリティ開示の注目点 1. 2024年開示ルールの動向 国際的な動向 2024年は、サステナビリティ情報開示における重要な転換期として位置づけられることになりそうです。既に欧州連合(EU)の「CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)」が1月に施行され、また、「CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism、炭素国境調整措置)」の移行期間も開始されています。また米国でも証券取引委員会(SEC)は、気候変動リスク情報を含む非財務諸表並びに財務諸表の最終規則を3月に公表しました。一部の効力発生が停止されているものの、全米ベースでの規則が制定されたことになります。 EU、米国共に政治的動向が短期的にGXやSXの動きに影響を及ぼしていくことが予想されるものの、過去からの潮流が消えることはないものと思われます。 国内における動向 国内では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が3月にサステナビリティ開示基準の公開草案を公表し、25年3月には最終案を制定することとなりました。この基準は、IFRS S1号およびS2号をほぼそのままの形で取り込んでおり、国内企業に対する情報開示の義務化が進むことになります。実際の適用に関しては、対象範囲並びに適用時期の議論が行われています(金融庁資料参照)。 2. 2024年日本企業が取り組むべきこと SSBJ基準の正式適用は、大企業についても2027年以降と想定されていますが、実際にはそれを前倒しした形での実質的な適用が進むものと見込まれます。既に国内企業にも大きな影響力を持つCDPは、昨年2023年の調査数を1,000社上回る3,300社に対して質問を送付したことが明らかになっています。 東証プライム企業の総数は1,644社であることを考えれば、その2倍以上の企業にも開示の要請が行われていることになります。また、CDPの質問項目のカバー領域は広範囲にわたっており、既に気候リスクのみならず生物多様性などの項目も取り込まれています。特定の大規模企業以外にも開示の波は寄せてきていると言ってよいでしょう。 2024年の取り組みにあたって、3点ポイントをまとめてみました。 i. 有価証券報告書への注目度の高まり 金融庁は、有価証券報告書のサステナビリティ情報の充実に大きな関心を寄せています。それを受けて2024年度も昨年と同様にこの分野への評価を重点的に行うとしています。今年度の主要調査項目として、サステナビリティ関連では、①サステナビリティに関する考え方及び取り組みの開示、②女性管理職比率の開示及び当該比率算定上の管理職の範囲、③取締役会・監査役会等の活動状況の開示の3点が示されています。投資家からの注目度も高い分野であり、根拠を持った丁寧な記載が求められています。 ii. CSRDへの対応 CSRDは、EUで一定規模以上の事業を行う域外企業にも適用されています。日本は輸出量では、輸送用機器の28%、一般機械の21%、電子機器の16%がEU向けであり、CBAMとともにCSRDへの対応準備を急ぐ必要が有ります。特に、CSRDでは「ダブル・マテリアリティ原則」に基づく詳細な情報開示が求められている点は留意が必要です。企業活動が環境・社会に与える影響だけでなく、外部環境が企業の業績や財務状況に与える影響についても開示しなければならないということです。 必要なデータ項目の確認と整備をはじめ、本格展開までに残された時間での準備を急ぐ必要が有ります。また、CSRDでは今後、開示内容についての保証が求められることが予定されています。保証については、国内での取り扱いについて2025年以降議論が開始される予定です。いわゆるグリーンウォッシングのチェックは投資家からも強く期待される項目であり、国内でも必須となるものと見込まれます。事前の準備として、今からでも開示内容の根拠(エヴィデンス)をデータ化し保持する体制整備を行うべきでしょう。 iii. SSBJ基準(S1/S2)への準備 国内では2024年度中に、SSBJ基準が正式に決定される予定です。若干の修正はあるにせよ、基本はIFRS S1号、S2号を引き継ぐものとなります。S1号は「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般要求事項」であるのに対し、S2号は「気候関連開示」となっています。それぞれを、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標(targets)」の4項目に分けて記載することが求められています。 S2においては、気候関連指標として温室効果ガスのScope3の開示、内部炭素価格、気候関連指標と報酬への反映についての説明も求められており、新たな取組が必要となる企業も多いものと思われます。 3. RIMMサービスのご紹介 株式会社SDGインパクトジャパンとシンガポールのRIMM Sustainabilityのジョイントベンチャーである株式会社RIMM Japanは、サステナビリティに関する情報の収集と視える化を実現するサービス提供を行っています。 RIMMの特徴 RIMMの提供するサステナビリティ評価サービスとして、次の特徴があります。 1.サステナビリティ全般(ESG全領域)を対象  GHG排出だけでなく、人的資本、ガバナンスの含めた評価 2.業種ごとに、国際基準に基づいたアセスメント  業種特性に応じた質問を、15種以上の国際基準から選別提案  質問に回答することで国際基準準拠のアセスメントが完了 3.同業他社との比較による評価  同業他社との比較により、自社の課題を容易に把握  他社水準の確認が可能  4.Webの上で、データ収集・アセスメント・評価・レポートを提供  グループ企業等、分散しているデータの一元化  各チームの共同作業でアセスメント完成 RIMMを使えば、自社内に専門家や専門チームを持たない企業でも、自らの状態を視える化することができます。また、項目ごとの他社比較によって、自社の有意な点や改善が必要な点を把握し、企業価値向上への取り組みに着手することができます。また、SaaS方式での提供ですので、どのポイントを改善すれば全体でどのような評価になっていくのかをシミュレーションすることもできます。こうした特徴を利用したいくつかのユースケースをご紹介します。 新たな基準への対応準備 RIMMを利用することで、今までに対応していなかった新たな基準への準備が可能になります。現状保有している情報をベースに、CSRDなどの基準のアセスメントを行うことで、どの情報が不足しているか、どのような枠組みが必要になるかのギャップ分析を行うことが可能です。また、アセスメントを行う際に、バックデータを収集する機能を有しています。その機能を利用し、今後、保証が必要とされた場合の準備を進めることも可能です。 自社独自のアセスメントへのカスタマイズ 自社グループやサプライチェーンのサステナビリティ評価を行う場合、国際基準に基づいたアセスメントに加えて、自社が必要と考える項目を追加することで、自社オリジナルのアセスメントにカスタマイズすることが可能です。自社グループのポリシーやルールの適用状況の確認や、自社グループ取引先の状況把握にためにオリジナルの設問を追加することで、自社のニーズに合ったデータの集積やモニタリングが可能となります。RIMMの柔軟なシステム構成を利用し、スムースなカスタマイズを実現します。 RIMMのサービスは、貴方の会社のサステナビリティを可視化します。お問い合わせは以下のホームページから、もしくはメールでお願いします。 RIMM Japan HP:  […]

NextGen ESG Japan アニュアルレポートを公開

NextGen ESG Japan アニュアルレポートを公開 SDGインパクトジャパンでは日本の上場株を投資対象としたエンゲージメント型ファンドの投資助言を行っています。当ファンドは経済的リターンに加えて持続可能な未来に向けて具体的なアウトカムを創出するための取り組みに焦点を当てた、長期志向のインパクト投資を目指しています。 弊社は主に各企業の事業戦略に強い関連性があり、企業価値向上に資する環境、社会、ガバナンス、ジェンダーの課題を特定し、改善に向けた建設的な対話を継続的に行っています。当ファンドの最高投資戦略責任者であるサシャ・べスリックはNordeaなど欧州の大手運用会社においてESG投資を長年推進しており、日本企業の可能性に注目して弊社での当戦略の立ち上げに参画しました。 2022年4月に明治安田生命様がシード投資家として参加していただいたことで運用が始まり、今では投資先企業27社と事業成長を導くサステナビリティ目標のKPIに合意し、改善に向けてさまざまな提案、対話を積み重ねています。 この度、当戦略のサステナビリティ目的である、環境、社会、ガバナンス、ジェンダーの進捗状況、ならびに一部ポートフォリオ企業の実績の事例などを掲載するレポートを作成いたしました。 ご関心がございましたら、ぜひお問い合わせください。 AgFunder Grow Impact Acceleratorの第5期生が決定 AgFunder SIJ Impact ファンドを一緒に運営しているAgFunderは毎年シンガポールでAgFunder Grow Impact Acceleratorを開催しており、1ヶ月以上にわたる選考と面接を経て、第5期生(GIA5)が決定しました。 アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸の4つの異なる地域のスタートアップが選定され、「GIA5」はこれまでで最も地理的に多様なグループとなりました。また、今回のGIA5は、SDGs 13(気候変動に具体的な対策を)、SDGs 2(飢餓をゼロに)、SDGs 12(つくる責任 つかう責任)をソリューションとして取り組むスタートアップが最も多く、テクノロジー・カテゴリー別では、農業インプットと精密農業が最も高い割合を占めました。 スタートアップは、(i)チームの質と資質、(ii)事業推進力とビジネスモデルの検証、(iii)対処可能な市場の大きさ、(iv)技術やソリューションの独自性、(v)人類や地球に対する潜在的インパクトなど、様々な選考基準に基づいて最終選考にかけられます。また、GIAプログラムへの参加には、AgFunder Grow Impact Fundからの投資要素も含まれるため、スタートアップの投資可能性も考慮されています。これには、企業評価、創業者のコーチング能力、キャップテーブル上の既存株主などの側面も含まれます。 アルファベット順に、GIA 2024プログラムに参加する8社は以下の通りです。 BioDefence(シンガポール):当社はバイオシールドと呼ばれる食用コーティング剤を製造しており、食肉、魚介類の保存期間を延長する。賞味期限が延びることで、食肉や魚介類のサプライチェーンや消費者がこれらの製品を売買するまでの時間が長くなり、食品廃棄物全体が削減される。 Bluemethane(イギリス):当社は水からメタンを回収し、バイオエネルギーとして再利用する製品を開発している。このスタートアップは廃水処理から始めており、将来的には貯水池や稲作、自然の水域にまで規模を拡大する計画である。 eFeed(インド):当社は、メタン排出量を削減しながら収量を維持するために、AIモデルを使用して給餌に関する推奨案を構築する精密家畜管理技術を提供している。同社によると、これまでに10万件以上の家畜データをAIモデルに学習させたという。 Fashol(バングラデシュ):同社は、農家と買い手、顧客、資本をつなぐアグリビジネス・プラットフォームによって、断片化された農産物サプライチェーンに対処している。同社は、農業食品システムを簡素化し、食品価格を安定させ、食品廃棄物を削減することを目指している。 Plantik(フランス):同社は、通常よりも短期間で気候変動に強くなるよう植物を改良する技術を開発している。そのパイプラインにあるツールは、さまざまな植物種に拡張可能である。 SAYeTECH(ガーナ):IoTを活用したマルチクロップ脱穀機や穀物クリーナーなどのスマート農業機械を設計・製造している。同社は、農家の収穫後のロスを減らし、農業のサプライチェーンを通じて効率を高めることを目指している。 Sylvarum(米国):同社は、作物の代謝を促進し収量を向上させる植物電気刺激技術に特化したディープ・テック・スタートアップである。最初の製品は、ハウス栽培のトマトに適用できる電気刺激システムである。 Vivagran(スペイン):同社は、トリトルデウムという新種の穀物を製造・商品化しているバイオテクノロジー企業である。この植物はデュラム小麦と大麦の野生種との交配種であり、製パン、製麦、飼料の高価値原料として使用できる。 今年もシンガポールのアグリフードテックウィークと同時期(11月18日-22日)にGrow Impact Accelerator Demo DayとAgFunder Asia AGMが開催される予定ですので、ご関心がございましたらぜひお問い合わせください。 ▼SIJの活動状況・ニュース 5/24 Japan Times主催「Special Evening Roundtable: Building a Greener […]

新Co-CEO 就任のご挨拶

新Co-CEO前川 昭平 就任のご挨拶 この度、2024年4月1日付けで代表取締役Co-CEOに就任いたしました。これまでの経験を活かし、株式会社SDGインパクトジャパン (以下SIJ)のさらなる発展に全力を尽くしてまいります。これまでと同様に皆さまのご協力・ご支援を賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。 皆様へのご挨拶を兼ねて、今後の事業展開に向けた自分の考えを綴りました。ご一読いただけましたら幸いです。 前川 昭平 代表取締役 Co-CEO 1/事業を通じた「新たな資本の流れ」の構築 企業がサステナビリティのインパクトと経済的な成長の両方を実現することは、本来非常に難易度の高いことであると考えています。SIJは、次世代のサステナブルな社会の実現に向けて、イノベーションを促進し、新たな資本の流れを作るということをミッションとして、その難しい課題に正面から向き合おうとしている会社です。ミッションの達成に向けて、チームとともに独自のビジネスモデルとそれを推進する力のある組織を作っていくことが自分の一番大きな役割だと考えています。 2/サステナブルな社会の実現に不可欠な資金シフト SDGs達成のための資金ギャップは年間3.9兆ドル、地球の気温上昇を1.5度以内に抑制するために必要な投資は年間4~5兆ドルなど、様々な統計やレポートがサステナビリティの促進・実現に大規模な投資が今後も必要だとしています。途方もない金額に思えますが、世界の運用資産残高は100兆ドル規模と言われており、その数%がサステナビリティにシフトされれば、解決が見えてくる可能性があるということでもあります。あらゆる主体が協力して、資金のシフトを実現していくことが求められており、SIJはその一助になりたいと考えています。 3/サステナビリティ軸で「インキュベーション」と「ファンド」を両輪とするユニークな企業 SIJは、サステナビリティの促進を絶対的な軸として、「インキュベーション」と「ファンド」の2つの事業に取り組んでいます。ファンドを通じて獲得した知見やネットワークをビジネスのインキュベーションに活用し、ビジネスのインキュベーションを通じて得た知見やネットワークをまたファンドで活用するという、2つの事業の好循環を生み出すことでサステナビリティの促進と経済的な成長を目指す、非常にユニークな企業であると自負しています。まだ設立して3年と少しの若い会社ですが、この両事業での実績を積み上げながら、力強い好循環を構築していきたいと考えています。 4/日本の強みをレバレッジしながらグローバルへ SIJのメンバーは、サステナビリティの領域で、大手金融機関から新たなテクノロジーの事業化に取り組むスタートアップまで、非常にグローバルな幅広いネットワークを持っています。そのグローバルなネットワークを通じて得られる機会や知見を当社のインキュベーションやファンドに反映し、日本の企業にサステナビリティ課題の解決にもつながる新たな投資や事業展開の機会を提供していきたいと考えています。同時に、日本の企業は世界の企業に先駆けて省エネや効率化に取り組んできた歴史があり、高い技術力やノウハウを有している側面もあると考えています。それらを海外に“輸出”し、産業発展に繋げながら、グローバル社会のサステナビリティ向上にも寄与するような仕組みを実現したいと考えています。 5/「問いかけ」ながら「形」にしていく 当社会長の谷家が常々「SIJは気候変動や社会分断などの社会問題を解決する方向にお金を回すというミッションに向けて多様な人が集まった場所。いわゆる梁山泊」と言っているのですが、実際に高い専門性を有する様々な人材が当社の自慢のひとつであり、社内では本当にいろいろなアイデアが次から次へと出てきます。大きな方向性を提示しながら、私自身も専門的な知見を磨きつつ、「問いかけ」を通じてアイデアを引き出す・紐解くこと、そこで見えてきたことを事業に落とし込んで「形」にしていくことが、SIJにおける自分の強みであり、足元で自分が果たしていくべき役割なのではないかと考えています。 6/大きなことを成し遂げるにはチームの力が必要 これまでのキャリアの中で、とにかく一生懸命頑張るということは実践してきたつもりですが、個人の力は当然限られており、お互いを尊重しあう個人がそれぞれの個性や強みを思う存分発揮し、目標に向かって力を合わせたときに大きな成果が実現できるということを様々な場面で実感してきました。前述の通り、SIJには様々な領域で高い専門性を有する人材が集まっていますので、それぞれの力をチームの力に昇華させることで大きなことを成し遂げていくことができればと考えています。またこれらはSIJの社内だけでなく、当社と事業で様々に連携してくださっている社外の”Like-minded partner”の方々との関係でも同じことが言えると考えております。社内外の方々と成果をシェアできたときにこそ、非常に大きなやりがいを感じられるのだろうと思いますので、そのような成果とやりがいを目指して、これまで通りまた一生懸命頑張ろうと思っています。 前川 昭平 略歴 株式会社SDGインパクトジャパン 代表取締役 Co-CEO。SDGインパクトジャパン参画前は、ボストンコンサルティンググループにて、主に産業財・エネルギー領域の経営・戦略コンサルティング(中期経営戦略・全社構造 改革・会社統合PMI・新規事業戦略・デジタル戦略等)に従事。それ以前は三井物産にて食料・化学品領域の海外事業投資(M&A・JV構築・ポートフォリオ再編等)やグローバルトレーディング業務に従事。また英国のESG投資の評価・調査機関であるEIRIS(現Moody’s ESG Solutions)にて戦略検討や顧客開拓にも従事。慶応義塾大学経済学部卒  HEC Paris経営大学院経営学修士(MBA) ▼SIJの活動状況・ニュース 4/1 当社新経営体制のお知らせ 上記にてご案内いたしました代表取締役の異動および経営体制の変更につきまして、当社ウェブサイトにてご案内しております。 https://sdgimpactjapan.com/jp/announces-change-in-co-ceo-and-management-structure/ 4/24発売の財界・2024年春季特大号に特別座談会の記事が掲載されました 「SDGs、ESGなど社会課題解決に向け、金融の役割とは何か?」をテーマに、三菱UFJフィナンシャル・グループ社長/亀澤様、明治安田生命保険社長/永島様、当社取締役会長/谷家の3社による特別座談会の記事が掲載されました。 https://www.zaikai.jp/magazines/detail/367 5/15-16 CEO小木曽がアンバサダーを務めるSusHi Tech Tokyo 2024が開催されます 「SusHi Tech Tokyo 2024 Global Startup Program」は、世界共通の都市課題解決に向けた国内外スタートアップエコシステムとの”まだ見ぬ出会い”を創出するアジア最大規模・日本で唯一のグローバルイノベーションカンファレンスです。 開催日:2024年5月15日(水)-16日(木)の2日間開催場所:東京ビッグサイト 西展示棟1・2ホール ※会場とオンラインのハイブリッド開催(ブース出展は会場のみ)主催者:SusHi Tech […]

グローバルにおけるアグリフード・テック投資のトレンド

先日(3月19日)、芙蓉総合リース株式会社からの、農業や食料分野のスタートアップに特化した「AgFunder SIJ Impactファンド」への500万ドル(約7億4000万円)の出資受け入れに関してリリースを配信しました。 当ファンドは、シンガポールのベンチャーキャピタルAgFunder Asia Pte. Ltd.と株式会社SDG Impact Japanが共同運営しており、アサヒグループホールディングス株式会社、明治ホールディングス株式会社、キユーピー株式会社、株式会社中島薫商店などの日本の大手食品会社からの出資を受けています。今回は金融・サービスの企業が参加したことで、社会課題の解決と経済価値の両立を目指すアグリフード・テックへの投資の重要性に注目が集まっています。 アグリフード分野では、フードロス、農業活動によるCO2排出、将来の食糧危機など、さまざまな社会課題があります。海外ではこれらの問題解決のためにフードテック分野への投資が活発化しており、日本政府もこの分野への支援を行っています。 今月のコラムでは、AgFunderが発表した最新報告に基づき、グローバル市場におけるアグリフード・テックへの投資に関する情報をお知らせします。 *内容はAgFunder社がまとめた“Global Agrifood Teck: Investment Report 2024”から抜粋https://agfunder.com/research/agfunder-global-agrifoodtech-investment-report-2024/ 2023年は投資が大幅に減少し、2024年もアグリフード・テックにとって厳しい一方で、新たな投資機会が提供される見通しです。 2023年はVC業界全体にとって厳しい1年ではありましたが、アグリフードの分野でも同様に2023年は前年比49.2%減少しています。取引件数は前年比26%減、取引金額の規模は前年比で約30%減少しました。 成熟したアグリフード・テック企業にとって、2024年は厳しい一年になる見込みですが、一方で、ビジネスモデルの見直しやスリム化により、企業評価を高め、新しい投資を得る機会が増えると予測されています。 アグリフード・テックがグローバルベンチャーキャピタル投資のわずか5.5%にとどまる事実は驚きです。食品と農業は世界経済や雇用に大きな貢献をしており、世界GDPの15%を占め、労働力の半数以上を雇用しています。それなのに、この分野への投資が少ないのはなぜでしょうか?社会課題解決に向けて、より多くの投資家がこの分野に参入する必要があると考えられます。 2023年のアグリフード・テック投資を振り返りましょう。 アグリフード・テックのスタートアップは、世界中で総額156億ドルを調達しました。この数字は昨年比で49.2%減少しましたが、一部の分野ではポジティブなトレンドが見られました。 2023年には、2つのカテゴリーが前年比で成長しました。バイオエネルギー&バイオマテリアルの資金調達金額は30億ドルで20%増加(リサイクル可能なプラスチックの代替となる繊維成型品を製造するFootprint社が830百万ドル資金調達したことがけん引)しました。またファームロボティクス、機械化、および設備も過去5年間の着実な上昇トレンドを継続し、前年比9%増の7.6億ドルとなりました。農場や食品生産のアップストリームスタートアップへの投資は、2023年に全体の資金調達の62%を占め、そのシェアを伸ばしました(2022年は51%、2021年は30%でした)。 一方で大きな比率を占めていたeグロサリーは60%減、クラウドリテールは79%減など川下を中心に厳しい状況でした。 次に地域別で見てみましょう。 アグリフード・テック分野をけん引していた米国が前年比58%減と大きく冷え込みました。過去において米国は当分野の投資金額全体の40%を占めているのですが、30%までに低下しました。また、昨年2番目に投資金額が大きかったインドも76%減と大幅に縮小したこともあり、アジア全体でコロナ前までの水準までに下落しましたが、アジアは今後も人口が増えることで供給と需要の両方で重要な地域となり、持続可能な食農が必須となると考えています なお、欧州の下落幅は小さく、前年比14%減少にとどまり、米国との差がだいぶ縮まりました。 以下では、フードテックとアグリテックに焦点を当てて、ベンチャーキャピタル投資家に聞いた2024年の投資市場に対する予測をご紹介します。 2024年に最も多くの資金を集めるカテゴリーは何ですか? 代替タンパク質のカテゴーで、特に培養肉や精密発酵がそのトップとなっています。フードデリバリーやバイオテクノロジー、健康と栄養関連のスタートアップも支持を受け、それぞれ12%から15%の支持を得ています。Seana Day – Culterra Capital 2024年のトレンドは? VCの回答では、AIと自動化、健康と栄養、そして炭素が注目されています。過去5年間、食品業界は革新的なイノベーションを続けてきましたが、成功例は限られており、真の革新は時間を要するものです。そのため、ディスラプションよりも持続可能な革新を重視するべきです。Matilda Ho – Bits x Bites 2024年のアグリフード・テック投資に関する予測は? 投資家の多くが、投資家や創業者に対して計画的で責任ある行動が求められていると言っています。ほかにも出口戦略や投資リターンに関する興味深い予測が語られています。 VCが資金調達に苦戦しているため、より多くの企業が投資活動を活発化させるでしょう。Erin VanLanduit – Cargill 一握りの企業が、市場をリードする製品を持って明確なカテゴリーのリーダーとして浮上するでしょう。Katrin Burt – Grosvenor Food & AgTech […]

フェムテックとは?~市場としての魅力や動向~

▼フェムテックとは?~市場としての魅力や動向~ SDGインパクトジャパンでは、女性やLGBTQの人々の社会的・経済的地位やWell-beingの向上、課題解決のための社会構造変化を目的としたジェンダーインパクト投資ファンドの立上げを検討しています。 ジェンダーインパクト投資ファンドの投資領域は、ファンドの目的に照らし合わせ、幅広い領域にまたがる想定です。そのなかでも、今月のコラムでは、注力領域の一つである「フェムテック」に焦点を当て、そもそもフェムテックとは?市場としての魅力や動向は?をご紹介させていただきます。 「フェムテック」概要 コラムをご覧いただいている皆さまは、「フェムテック」という言葉を耳にされたことがありますか?フェムテックは、「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」をかけあわせた造語で、女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを指します。 フェムテックのテーマとしては、女性のライフステージに沿って、月経や避妊から不妊・妊娠、産後ケア、更年期があります。更には、乳がんや子宮内膜症などの女性特有疾患、性に対して心身ともに健康であることを指すセクシュアルウェルネスなども、フェムテックのテーマに含まれます。 これらテーマに付随する悩みやニーズを解決するための製品やサービスとして、テクノロジーが活用されており、例えば、月経の健康管理や避妊のための生理周期トラッキング、不妊治療に関連して在宅で生殖能力を分析する検査キット、妊娠や更年期障害の在宅ケアプラットフォームなどがあります。 このようにしてみると、女性の健康に関する課題とそのソリューションは多岐に渡り、フェムテックと一口に言っても、幅広いテーマが広がっていることが見えてきます。 各種情報よりSDGインパクトジャパン作成 市場としての魅力 ここまで女性の健康課題とフェムテックによる解決の可能性を見てきました。そこには大きな社会的インパクトがあることが伺えますが、ビジネスとしての魅力はどうでしょうか。 Fem Tech Analyticsのレポートによると、フェムテックの市場は、2021年の約253億ドル(約3.8兆円)から、2030年には約973億ドル(約14.6兆円)規模の市場へと高い成長率で拡大する見込みです。 Fem Tech Analyticsより引用 フェムテックが注目を浴びている背景には、一つ目に働く女性の増加があります。女性の社会進出が進む中で、女性特有の健康課題による社会的損失が意識されるようになってきています。経済産業省によると、女性の健康課題による日本社会の経済損失は、年3.4兆円に上るとされています。また、SDGsのターゲットの一つでもある、ジェンダーギャップ解消に向けた動きが推進される中で、これまでタブー視されてきた女性の健康課題に対する社会や女性自身の意識の変化・取り組みも加速しています。 こうした中で、社会全体・企業としても女性の健康課題の解決は急務となり、当然女性個人にとっても解決のニーズは大きい中で、その解決を実現可能にするテクノロジーの進化・普及も揃い、フェムテックは市場としての魅力の高まりを見せているのです。 海外では欧米を中心にフェムテックに特化したベンチャーキャピタルファンドも複数登場してきました。 各種情報よりSDGインパクトジャパン作成 フェムテックのスタートアップも続々と立ち上がっており、女性や家族の健康のためのデジタルヘルスプラットフォームを提供するMaven Clinicをはじめとしたユニコーン企業(企業評価額10億ドル以上の設立10年以内の未上場企業)も複数登場し、増加傾向を示すExitは、2021年までに105件になりました。2019年に上場した生殖医療の福利厚生サービスのProgynyは、2024年2月時点の時価総額が、約38億ドル(約5,700億円)にも上ります。 日本においても、女性の月経や妊活をサポートするためのモバイルアプリケーション『ルナルナ』や『Flora』などの製品・サービスが、多くの女性に利用されており、大手企業の福利厚生においても導入が進められています。 ここまで見てきたように、フェムテックは女性の社会進出やジェンダーギャップ解消の動き、更にはテクノロジーの進歩を背景に、これまで十分に満たされてこなかった女性の健康課題解決のニーズに応えるソリューションとして強く期待されており、一層の成長が見込まれる市場といえるかと思います。 結びに 女性の健康課題を解決するフェムテックは、社会的インパクトはもちろん、ビジネスとしてのチャンスも大きい魅力的なテーマです。 そして迫る3月8日は、ジェンダーギャップの解消を目指しグローバルな連帯を示す『国際女性デー』です。年々、関心の高まりを見せていますが、今年も様々なイベントの開催が世界中・日本各地で予定されています。皆さんもぜひ興味のありそうなイベントを探して参加してみてください。 SDGインパクトジャパンも、ジェンダーギャップ解消を始めとし、社会課題の解決に向け、一層努力してまいります。(SDGインパクトジャパン 山本美里) ▼イベント・セミナーのお知らせ 3月14日 ドルビックスコンサルティングxRIMM Japanウェビナー開催のお知らせ 「総合商社の SX × DX 実践事例 ~サステナビリティ情報開示のトレンドから事業のグリーン化推進アプローチまで~」 デジタルを活用して経営・事業変革を推進する様々なサービスを提供しているドルビックスコンサルティング株式会社と、ESG評価ツールを開発・提供する当社グループ会社の株式会社RIMM Japanとの共催でウェビナーを開催いたします。 企業がSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)に取り組む意義と課題、解決方法を、事例とともに詳しくお伝えします。 日時:2024年3月14日(木)16:00~17:00 Q&A時間含む参加費:無料(ご登録後、Zoom URLを含むご視聴案内をお送りします)対象者:企業のサステナ推進部門/環境関連部門ご担当者様主催:ドルビックスコンサルティング株式会社/株式会社RIMM Japan 【詳細・お申し込みはこちらから】https://www.dolbix.com/seminar/detail004/ ▼SIJの活動状況・ニュース sustainacraft x SIJ カーボンクレジットセミナーを開催しました 2月26日に「自然資本への投資とカーボンクレジットの役割とは」と題したハイブリッドのセミナーを開催しました。 当日は約160名の方に会場ならびにオンラインでご参加いただき、どうもありがとうございました。環境省、コンサベーションインターナショナルジャパン、関西電力、三菱UFJ銀行、サステナクラフトにご登壇いただき、政策動向、カーボンクレジットが創出される現場、当分野における各企業の取り組みなどさまざまな側面から大変興味深いお話をしていただきました。 ▼そのほかのニュースはこちら https://sdgimpactjapan.com/jp/news/ ▼Link 株式会社SDGインパクトジャパン ▶ウェブサイト ▶LinkedIn […]

sustainacraft x SIJ 共催ウェビナーレポート

▼コラム SDGインパクトジャパンでは、カーボンクレジット事業を推進しており、新興国・途上国を中心とした、再生可能エネルギーや省エネなどの脱炭素プロジェクトへの投資を通じて、気候変動の緩和の実現とカーボンクレジットの創出を目指しています。 先月、sustainacraft社と一緒に「2023年のボランタリーカーボンクレジット市場の振り返り」と題したオンラインセミナーを開催し、昨年のCOP28の概要、ボランタリーカーボンクレジット市場の現況を需要と供給の観点から定量的な数値を用いて紹介しました。200名以上の参加登録をいただき、当分野における関心の高さを実感しました。 sustainacraft社は、カーボンニュートラルを実現するために現在注目が集まっている自然を基盤とした解決策(NbS: Nature-based Solutions)に着目し、事業展開を行っているスタートアップです。 今月のニュースレターではセミナー内容のサマリーをご紹介させてください。 「脱炭素化動向とCOP28結果概要」 はじめに、弊社の気候変動スペシャリストである栗田より直近の脱炭素化動向ならびにCOP28の内容について説明しました。昨年11月30日から12月13日までドバイで開催されたCOP28の参加者は85,000人で、COP26、COP27の参加者は 4万人程度であったことを考えると、今回はその2倍以上であり、気候変動対策に関する世界の関心はより高まっています。 COP28における最大の注目点は、パリ協定下で実施される第 1回の グローバル・ストックテイク (GST*)に関する議論の行方でした。今回採択された決定文書には、1.5℃目標達成のための緊急的な行動の必要性、2025年までの排出量のピークアウト、全セクターを対象とした排出削減、各国ごとに異なる道筋を考慮した分野別貢献(再エネ発電容量3倍・省エネ改善率2倍のほか、化石燃料、ゼロ・低排出技術(原子力、CCUS、低炭素水素等)、道路部門等における取組)が明記されました。 GSTの結果を受け、現行のNDCでは 1.5 目標に対して大きな乖離があるとの認識が共有され、2025年の NDC改定に向けて、 2030年、 2035年の目標値を一層引き上げるというコンセンサスが得られました。 その他には、COP27で設置が決まったロス&ダメージに対応するための基金を含む資金措置制度大枠の決定、6条に関連する議論などがなされました。 なお、気候資金目標に関する問題として途上国が気候変動に対応するための資金ギャップは現在のところ2030年までで 5兆 8,000億~ 5兆9,000億米ドルと見積もられておりますが、2020年までに先進国によって共同設立予定となっていた 1000億ドル /年の緩和ファンドに関して資金が集まっておらず、2025年までの資金準備を再度先進国に促すことになりました。 引き続き1.5℃目標の実現に向けて、COPが気候変動対策を加速させる重要な合意ができる場になることを期待しています。 「ボランタリークレジットの市場動向」 次にsustainacraft社CEOの末次氏よりボランタリークレジットの需給分析、個別企業の活用事例をつかって、当市場の現況についての説明がありました。 2023年のカーボンクレジット償却量(VCS, GS, ACR, CARの4つのレジストリー合計値**)は155Mクレジットと2021年比で微減となりました。メディア記事などでカーボンオフセットに対する批判が出ていることを背景にオフセットを撤回する企業や減らす方向性を示す企業が増加した一方で、これまでカーボンクレジットを積極的に活用してこなかった企業などにおいて、長期目標を達成した上での残余排出量に対するオフセットを計画しており、大規模な投資案件を表明するケースも出てきています。償却されたクレジットの種類としては、依然として再エネ等のエネルギー系のクレジットが大半を占めますが、この3年はREDD(森林減少と森林劣化に由来する排出の削減)やNature Restorationなど自然由来の割合が増加しています。 セクター別の分析においては、エネルギー分野ではオフセットに対する批判を受けて、Shellなどはオフセットへの投資のアグレッシブな計画を一旦撤回しました。しかし、2023年はエネルギーセクター全体としてこれまでの中で最も償却量が多かった年でした。当セクターの特徴として自然由来クレジットを選好しています。ヘルスケアセクターでは2021年以降の償却量は多くなく、オフセットの利用を取りやめた企業がある一方で、直近では長期目標の設定と合わせて、残余排出量のオフセットを明言している企業が多数存在し、大規模な投資案件も公表されています。消費財セクターは批判があったネスレなどはオフセット市場からの撤退があり、大幅に償却量が減少しましたが、バリューチェーンにおいて影響を与えているケースが多く、オフセットではなくインセットへの移行が進んでいます。高収益企業の多いテクノロジー・メディア・通信(TMT)セクターは自然由来のプロジェクトに加えて、技術由来除去クレジットへの投資も表明しています。 続いて、sustainacraft 社讃井氏から商船三井、アストラゼネカ、ネスレのケーススタディの紹介がありました。 商船三井は事業計画「BLUE ACTION 2035 」に基づき、海を起点としたインフラ企業として、環境保全等のニーズに対し、技術とサービスの進化で挑むことを目指しています。自社の削減と並行して、吸収・除去系クレジットへの投資を行っています。技術系クレジットにおいてはファースト・ムーバーズ・コアリションおよびNextgen CDR Facility などへ参加、自然系クレジットにおいては国内外のブルーカーボンプロジェクトに参加しています。 アストラゼネカは、「地球の健康」は世界中すべての生命に影響するという認識の下、ネットゼロの達成に向けた野心的な目標「アンビション・ゼロカーボン」を掲げ、環境への取り組みを行っています。Scope 3を含めて2030年までに50%、2050年までに90%削減を表明しており、社外脱炭素プロジェクトに関する主要アクションとして2030 年までに2 億本の植樹を目指し、追加で400 百万米ドルの投資を発表しています。 ネスレはオフセットから撤退し、自社のバリューチェーン内における再生農法を推進することで、最大1,300 万トンのCO 2 除去を目指しています。 最後に末次氏からプロジェクトの種類、国別、規模感などから分析したカーボンクレジットの供給サイドにおける特徴を示しました。分析結果から、以前は再エネ系が中心だったのが、2020年以降、非常に多くの自然由来のカーボンプロジェクトのパイプラインが生まれています。また、自然由来のカーボンクレジットはREDDが中心だったのが、最近ではNature […]

年末のご挨拶

2023年も残すところ、あと僅かとなりました。皆さまにとってはどのような一年でしたでしょうか? 2022年から続くウクライナの紛争に加え、今年はスーダン、エチオピア、コーカサスでも続発しました。これらの紛争は、ガザとイスラエルで戦禍が勃発する前のことでした。また、世界各地での記録的な気温上昇、リビアの洪水、カナダやハワイの山火事など、気候変動の影響を目の当たりにしました。 一方で2020年以降世界に蔓延したコロナ禍の収束、WBCをはじめスポーツにおける日本チームの活躍、日本株式市場の躍進など明るいニュースもありました。また、AIの普及のみならず、ゲノム編集技術「CRISPR」を用いた遺伝性疾患の治療法が初めて承認され、米国での「核融合点火」の再現など、医療、科学、バイオテクノロジーにおける重要なイノベーションが起きた年でもありました。 そのなかでSDGインパクトジャパン(SIJ)はファンド事業、インキュベーション、イベント開催など様々な取り組みを通し、持続可能な未来に向けて一生懸命活動した1年となりました。 SIJの今年の5大ニュースです! 三菱UFJ銀行様との資本・業務提携 三菱 UFJ 銀行とSDGインパクトジャパンは、二国間クレジット(Joint Crediting Mechanism)*の創出をはじめとした、日本と世界のカーボンニュートラル実現に向けた協業などを目的に、資本・業務提携に係る契約を締結しました。 カーボンクレジット市場は、世界の脱炭素化を加速させるために不可欠なメカニズムですが、その堅牢性、透明性、信頼性を高めるためには、関係者の協力が不可欠だと考えています。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000091539.html 環境省「令和4年度二国間クレジット制度資金支援事業のうち設備補助事業」に採択(インドネシア北スマトラ州プンガ川) 令和4年度JCM設備補助事業に採択された「インドネシア/北スマトラ州プンガ川における3.5MW小水力発電プロジェクト」の代表事業者としてSDGインパクトジャパンが採択されました。カーボンファイナンス事業の拡大はSIJの優先事項の一つであり、脱炭素化ファンドの設立を通じて、JCM市場の活性化、質の高いカーボンクレジットの市場成長に注力してまいります。 https://gec.jp/jcm/jp/news/20230413/ 環境省第4回「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」投資家部門 特別賞受賞 SDGインパクトジャパンは、ESG 観点で今後の開示や対応の改善余地が大きいと考えられる日本の中小型株にフォーカスしたSFDR 9 条対応のESGエンゲージメントファンドを推進するなど、明確なビジョンに基づく取組が評価されました。SIJはエンゲージメント活動を通じ、企業のコア事業価値向上に資するESG課題を特定し、改善に向けた施策の提案および実装のサポートに努めています。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000091539.html ユニゾン・キャピタル・グループの戦略的提携 SDGインパクトジャパンと、ユニゾン・キャピタル・グループは、インド・太平洋地域において持続可能な社会の促進に向けた課題解決を目指す革新的なベンチャー企業への成長資金提供を行うファンドの組成と、持続可能な社会に向けた課題と機会について議論し、ベンチャー企業を支援するためのフォーラムの設立を目的とした基本合意書を締結しました。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000091539.html 関連会社のRIMM JAPANのESG評価のmyCSOプラットフォーム日本版をリリース 企業のサステナビリティ・ニーズにお応えする「myCSO」が、中小企業のサステナビリティへの取り組み推進をサポートしていきます。myCSOプラットフォームの日本版を提供することにより、日本企業特有の持続可能性とコンプライアンスに関する課題解決において、日本企業をより深く支援することが可能となりました。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000098772.html * JCMはパリ協定の6.2条に基づいてCO2など温室効果ガス排出削減量を再エネや省エネプロジェクトを通じて創出し、それを国間、企業間で取引する仕組みです。削減量は通称JCMクレジットと言われton-CO2単位で計量、取引されます。 2024年も有力な戦略パートナーとの事業提携、サステナビリティを促進する投資戦略の設定、事業のインキュベーションなどなどパイプラインは豊富で、皆さまにいろいろとニュースを発信していく予定です! 2024年が皆様にとってより平和で、より持続可能な年となることを心よりお祈りしています。日本、そして世界でビジネスを成長させるため、皆様とともに働けることを楽しみにしています。 それでは、良いお年をお迎えください。 SDGインパクトジャパン メンバー一同 ▼SIJの活動状況・ニュース 12/26 sustainacraft x SIJ共催のウェビナーを開催しました テーマ:「2023年のボランタリーカーボンクレジット市場の振り返り」ボランタリーカーボンクレジット市場全体がどのように推移しているのか、需要と供給の観点から定量的な数値をお伝えいたしました。200名以上の参加登録をいただきました。Q&Aでも積極的なご質問をいただきありがとうございました。 来年もsustainacraftとの共催イベントを計画しておりますので、どうぞご期待ください。 ▼そのほかのニュースはこちら https://sdgimpactjapan.com/jp/news/

【COP28直前号】カーボンニュートラル達成にむけたカーボンクレジットの活用

▼コラム 2023年11月30日-12月12日に気候変動の国際的サミットである「COP28」が開催されます。本ニュースレターはCOP28の直前号と題し、2回にわたりCOP28に向けた気候変動の現在地と当社の取り組みについて紹介します。 COP28の主な議題 COPは「締約国会議(Conference of Parties)」という国連の条約締結国が一同に会する集まりで、近年では特に「国連気候変動枠組条約」の締結国による会議を指すことが多く、この気候変動枠組条約における会議は本年は28回目となり「COP28」と称されます。 GHG排出量の削減において一つの目安となっているのが、COP21(2015年)に締結されたパリ協定において各国が定めているNDC(各国政府が定めたGHG削減目標)です。パリ協定は、先進国をはじめとした世界の一部の国々だけでなく、気候変動枠組条約に加盟する 196カ国全ての国が削減目標を設定し、行動することをルール化した画期的な合意です。 今回のCOP28の主要なテーマとして以下の4つが挙げられています。 the Global Stocktake(グローバル・ストックテイク) the Mitigation Work Programme(気候変動緩和の実施プログラム) the Global Goal on Adaptation(気候変動適応のグローバル目標の設定) climate finance, including financial arrangements for Loss and Damage(クライメートファイナンス:損失と補償を含む) Council of European Unionプレスリリース(2023/10/17)より ここで最上位に挙げられている「グローバル・ストックテイク(GST)」がCOP28の最も注目されるテーマです。パリ協定では各国の温室効果ガスの削減進捗を5年ごとに評価することが定められており、これがGSTと呼ばれるものになります。COP28はこのGSTが初めて実施される年で、パリ協定締結以降の世界各国の削減努力がどの程度のものだったのかが明るみになります。 COP28のテーマ 実は現在のパリ協定で約束された各国のNDCを足しあげても、現状の目標値である1.5度や2度上昇までに抑えるために必要なGHG排出削減には足りないのが現状です。現在のNDC水準では、気温は2.4度上昇まで行ってしまうという報告もあり、今後各国で更なるNDCの目標設定を高めることが求められています。 このような背景から、定期的なGSTの実施を通じて世界の排出削減の現在地を把握した上で、1.5度上昇シナリオの達成に向けて、より一層の削減目標を高めていくことが基本的な方向性となっています。 COP28におけるGSTを踏まえて、各国は改めて2035年までの削減目標を国連に提出することが求められており、COP28を通じて現行の2030年までの削減目標の大幅引き上げを迫られるかどうか、各国の気候変動政策を左右する重要な会議になります。 日本に削減余地はあるのか 日本は2030年までに2013年比で46%の削減という目標設定をしており、それに応じて2030年までのエネルギーミックスの計画が定められています。特に、エネルギーの大きな部分を占める電源については、政府が定めている最新の2030年の電源構成では、再エネ36〜38%、原子力20〜22%、石炭19%、LNG20%、石油等2%、水素・アンモニア1%となっています。 一方で、2022年度の年間発電電力量に占める再エネの割合は24%で、化石燃料の割合が未だ7割を占めています。再エネ分野は、まだ10%以上の拡充が求められていますが、太陽光発電の土地確保の問題でペースが減速しており、大きな割合で期待されている洋上風力もさまざまな技術的・コスト的課題があります。原子力発電も原発再稼働に向けた動きがあるものの5%にとどまっており、2030年の想定の電源構成の達成には高いハードルがあります。 このような状況で、COP28を通じてさらに高い削減目標を目指す方向となれば、もはや国内の削減努力だけでは到達し得ない可能性も想定できます。 日本のNDCの達成に向けて 一方で、日本政府が策定したGHG削減目標には、「二国間クレジット(Joint Crediting Mechanism : JCM)の取得」という項目が含められています。日本政府が定めた46%削減に追加して、2030年までにJCMクレジットを官民で累積1億トン取得する目標が定められています。 JCMは、日本政府がMOU(了解覚書)を締結したパートナー国(現在28カ国 ※2023年10月末時点)と協力してパートナー国において脱炭素プロジェクトを組成・推進し、削減された温室効果ガス排出量をカーボンクレジットとして認定・分配する仕組みです。JCMはパリ協定6.2条の制度に基づいた制度で、日本のNDCの目標達成にも寄与します。国内で実施する電源構成の変更などの排出削減努力だけでなく、これらの日本国外における排出削減の努力への協力でもNDC達成への貢献するのです。 1.5度上昇の目標を達成するには、開発途上国の気候変動対策に対して年間3兆ドルから6兆ドルを支出することが必要とされていますが、現状は年間6300億ドルにとどまっています。これらの大きな気候変動への資金ギャップを埋めるために、先進国と開発途上国が官民をあげて協力して推進することが求められています。 JCMは「カーボンクレジットの獲得」というだけでなく、開発途上国を中心とした気候変動に向けた膨大な資金ギャップを埋める意義、そして日本の排出削減目標の達成に向けた貢献の意義も包含しています。(SDGインパクトジャパン パートナー 広瀬大地) […]

Wataru Baba

Senior Fellow, Climate and Sustainability at Panasonic Group since 2022, where he accelerated the company’s growth through an integrated strategy for creating positive impact on climate change and established Sustainability Committee, chaired by the Group CEO. Board Member of Japan Professional Football League (J.League) and Independent Director for a civic technology nonprofit, Code for Japan, and a web3 startup, Financie, Inc