寒い日が続きますが、皆さま如何お過ごしでしょうか。
昨年以来、ESGを取り巻く環境は大きく変化しています。米国では、トランプ政権移行後の1年間で、ESGからサステナビリティへ、そしてDE&Iはインクルージョンやビロンギングへ、と言葉の置き換えが進みました。欧州でも、ウクライナでの戦争の長期化や米国の動向を受けて、エネルギーや経済安全保証政策の見直しが進んでいます。世界的にも地政学的緊張の高まりやサプライチェーンの再編を受けて、価値や理念よりも短期的な安定性や競争力が強調される場面も増えてきました。そんな中企業も否応なく、新たな世界の中でのESGの再定義を迫られそうです。
ではまずは、ここ1年での幾つかのESGトレンドあげてみたいと思います。
1.リジリエンシーと経済安全保障
ここ一年で、ESG(環境・社会・ガバナンス)の定義は、地政学的な緊張の高まりを背景に、「経済安全保障(Economic Security)」という新たな視点を組み込む形に大きく変化しました。特に、サプライチェーンの強靭性や重要物資の安定確保が企業の持続可能性(サステナビリティ)に不可欠であるという認識が浸透し、「社会(S)」の評価項目に加わっています。象徴的なのが防衛産業(武器)への投資姿勢の変化で、かつてはESGファンドの除外対象でしたが、現在では「社会の安定に不可欠な安全保障に貢献する」として、投資を正当化・許容する動きが欧米を中心に広がっています。これにより、ESGは単なる倫理的配慮や環境負荷低減の枠を超え、企業の存続と国家のレジリエンス(回復力)を担保する、より戦略的な経営課題として再定義されています。一方で、これらの防衛産業などへの考え方は投資家によって異なるのも実情です。
2.知的資本と人的資本
AIアルゴリズム、特許、顧客データ、ブランド力といった「知的資本(無形資産)」が競争力の核となるにつれ、「イノベーションを生む専門知識」や「変革を推進するマインドセット」を持つ人材が不可欠との意識が高まっています。これを受けて、ESGの特にSとGは「企業の持続的な成長エンジン」を見極める指標として再定義が進んでいます。特にAI人材や従業員の働き方、エンゲージメントなどのテーマが企業の成長性を見極める上での重要指標と見なされるようになり、日本では人材不足を背景に、リスキリングやシニアや女性の戦略的な活用もテーマとして重要視されています。
3.非財務指標の「財務的価値」への統合
上記の様な流れを受け、気候変動や人的資本など、財務指標と切り離して語られがちだった「非財務情報」は、中長期的な企業の競争力や財務パフォーマンスを左右する「企業価値を構成する不可欠な要素」という位置付けへと進化しています。これは言葉的な再定義もありますが、気候変動ビジネスや人的資本への取り組み、ガバナンスの違いなどの違いが企業価値の源泉となることが、数字でも肌感覚でも当然に受け入れられるようになってきたことが背景にあります。
4.リジェネラティブ(再生型)、ネット・ポジティブへの進化
サステナビリティやESGの定義が、「悪影響を減らす」または「持続性を高める」だけでなく、環境や社会を積極的に「再生・向上させる(リジェネラティブ)」べき、という視点が新たなESGの定義に取り込まれ始めています。再生型農業や再生型都市、ネット・ポジティブなどがキーワードとなり、今後も拡大する傾向にありそうです。これは、地球環境が悪化する中、対応だけでは間に合わず、積極的な循環再生型の社会を築いていく必要がある、との意識の高まりによるもので、欧州ではすでに一部規制としても取り入れられつつあります。
様々な逆風が吹いているESGですが、視点を変えてみると、まさにそういった逆風がESGの本質に立ち返るきっかけを与えている、と言っても過言ではないのかもしれません。短期的な評価や制度の揺れが生じている今こそ、ESGを企業の中長期的な存続力や価値創造の観点から、再定義する良い機会となりそうです。
もともとESGの本質は、チェックリストや流行語ではなく、企業のミッションそのものにあります。この企業は、どのような社会の未来の課題に向き合い、どのような価値を、どの時間軸で創出しようとしているのか。その問いに向き合い続ける姿勢こそが、変化の時代における企業の競争力となりそうです。
SDGインパクトジャパン
Co-CEO 小木曽 麻里
▼SIJの活動状況・ニュース
弊社Co-CEO 小木曽 麻里が理事を務めるMashing Upが開催した第6回賛助会員勉強会のパネルに登壇し、「企業の利益と人権尊重の両立」をテーマに議論を交わしました。
これからの企業と人権を考える【Mashing Up理事と考える勉強会】 | Business Insider Japan
当社関連会社であるBio Engineering Capitalと東京科学大学が共催いたしました「HARBOR Demo Day」が1月27日に開催されました。当日はさまざまな医療課題に向き合う先進的な治療やシステム開発している6チームによるスタートアップピッチがありました。また、同会場内では15社の「医療機器フォーラム 革新的企業 技術シーズ発表&展示会」も同時開催されました。
▼イベント開催案内・報告
2026年1月27日(火)から29日(木)にかけて開催される「TechGALA Japan 2026」に弊社Co-CEO 小木曽 麻里がスピーカーとして参加します。
2026年2月13日(金)に開催される、フードテック官民協議会が主催するフードテックビジネスコンテストに弊社マネージングパートナー 岡 由布子が審査員として参加します。
2026年2月18日(水)に開催される、「From SEED TO GLOBAL Food Agri Tech Demo Day」のパネルセッションに弊社マネージングパートナー 岡 由布子が登壇します。
2026年4月27日(月)、28日(火)、29日(水・祝)に開催される、SusHi Tech Tokyo 2026のアンバサダーに就任いたしました。
SusHi Tech Tokyoは、アジア最大級のグローバルイノベーションカンファレンス であり、「持続可能な都市を高い技術で実現する」という理念のもと、スタートアップ、都市のリーダー、企業、様々なキープレイヤーや市民が集います。
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